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ナムルのからだと精神は、超高速で振動していた。
ナムルは光と同じ振動をしていたのだ。
これは山の神としても危険な術だった。
まだナムルも光になった経験はなかった。
(なんとしてもスターシアを助けなくては)
命がけだった。
ナムルは宝石化したスターシアのからだの中に入った。
きらめくようなまぶしさと、からだ中に苦痛を感じた。
長い時間、ナムルはさまよっていた。
その時間が永遠に感じられた。
再び、もどれないかもしれないという恐怖がナムルを襲った。
こんなことは山の神として生きてきてはじめての経験だった。
宝石のなかで行き場のない幾つもの光が、ナムルを吸収しようと襲ってきた。
甘美な襲撃だった。
この世の苦痛や憎しみから永遠に解放されそうな気分になった。
だが、それは危険な罠だ。
一度光に吸収されたら、二度と、ナムルは元にはもどれない。
ナムルは、光たちの甘美な襲撃をはねのけた。
そして、グングンとスターシアのなかに降下した。
スターシアの精神が森夢に完全に吸収されていないことを祈りながら。
(あれは……)
ナムルは光にあふれた空間の奥底にからだを丸めひざをかかえているスターシアを見つけた。まるで生まれたての赤ん坊のようだった。だが、息をしていないようにも思えた。
(スターシア!)
声は出なかった。心のなかでの叫びだった。
ナムルの心の声に反応して、ビクンとスターシアが動いたように見えた。
(生きてるぞ! 森夢に吸収されていない)
なんとかなるかもしれないとナムルは思った。
ナムルは、スターシアの横に降りた。
降りたというのは地上的な感覚のことだ。
この宝石の内部には、縦横上下がない。
まるで宇宙空間のようだった。
(スターシア……もうだいじょうぶだぞ)
ナムルは、赤ん坊のように丸まっているスターシアを抱きしめた。
スターシアは安心したようにナムルの胸の中に顔をうずめた。
そのことが、なんだかとてもいとおしくナムルには感じられた。
(まだ森夢のヤツに喰われちゃいねえ)
ナムルはほっとした。
スターシアの精神は本能的に防御態勢をとっていた。だが、それもいつまで保てるかわからなかった。
早くしなければならない。
(森夢をたたき出さなくちゃな……)
と、そのときだ。
ナムルの全身に激痛が走った。
「イテーッ! イテテテッ!」
ナムルはスターシアを離して飛び上がった。
森夢がナムルを見つけ喰らいついてきたのだ。
「さーっ、喰えっ! オレに喰らいつけ!」
ナムルは大声で叫んだ。
スターシアの体の中にいる森夢を全部、自分に喰いつかせれば、とりあえずスターシアを助けられると考えたのだ。
そのあとナムル自身がどうなるのかってことはまったく考えてもいなかった。
「イテテテテテッ!」
森夢はどんどんナムルに喰いついた。
「こんちくしょう! イテテテテテッ!」
激痛が次々と襲いかかった。
尾骨から頭のてっぺんまで激痛が走りぬけた。
だが、その痛みはしだいに甘美に変わりつつあった。
「おい! しっかりしやがれッ!」
と、ナムルは自分を励ました。
「さあ、スターシアの中にいる森夢よ! みんなオレに喰らいつきやがれ!」
大声で叫びながら、しかしナムルの意識は薄くなりはじめていた。
(こりゃ……やべえな……)
気力だけはあった。だが、どこからも力が湧き上がって来なくなってきた。
スターシアを助けるつもりが、自分まで森夢に冒されはじめていることにナムルは気づいた。
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