c マル天.com/新二都物語カルビサーガ第91話  
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ICON 新二都物語カルビサーガ 第91話

 太陽が頭上にあった。森の緑が濃い。むせかえるような山の匂いだった。
 ナムルがスターシアを背負っている。
 時折、カルビは振り返り、スターシアに声をかけた。
 森はしだいに深くなっていた。
〈銀の皇帝〉の山城を出て2日間、山の中を歩いていた。水と食べものはナムルが見つけてきた。
 サクサクと膝上まである下草を分けるようにして進んだ。
 森の湿度を体に感じる。
「なんだか元気になるわ」
 スターシアが言った。
「森には霊気がある」
 ナムルが答えた。
 森は生き物の心や体の傷を癒す。
「あの大きな木の下で休もう」
 カルビが指さした。
「そうだな」
 ナムルがうなずいた。
 その木の下には下草がなく、鮮やかな緑の苔におおわれていた。
 カルビが「今度は俺が、食い物探してくる」と走った。
 ナムルはスターシアを苔の上に寝かせた。
 ちょうど苔が自然のクッションのように柔らかくスターシアをささえた。
「カルビはいいやつだ」
「ええ。そうね」
 スターシアはなぜナムルが突然そんなことを言い出したのかとまどった。
「あいつはあんたのことが好きだ」
「えっ……」
 言葉につまった。
 私も好きだと素直には言えなかった。
 それは、ナムルとカルビの関係を思ったからだ。
 このふたりの友情に、割り込んでしまうような気がしたからだ。
 そのことが、言葉をつまらせた。
「あいつは特別なんだ」
「特別?」
「ああ。オレはあいつを喰った。それでも、あいつは生きた。オレはあいつに命をひとつやった。それで喰ったつぐないをした。あれは、偶然じゃない。たぶん、あいつを喰うことははじめから決められていたことなんだ。そして、オレの命をやることもな……」
 ナムルは平然とした顔で深刻な内容をしゃべった。
「だれが、決めたことなの?」
「わからん」
 あまり唐突なので、くすっとスターシアが笑った。
「笑うなよ。オレは真剣だ」
 ナムルが口をとがらせた。
「信じるわ」
「いや、あんたは信じちゃいない。だがな、いつかわかる。この山に暮らしてみれば、生き物の一生がなんてはかなく、だけどなんとそのつながりが強いものかが」
「そうするわ。いっぱい教えてちょうだい、ナムル」
 と、スターシアはナムルの手に自分の手を重ねた。
「あ、ああ」
 と、手を引っ込めてナムルがテレた。
「少し疲れたわ」
「眠ればいい。安心して眠れ」
「うん」
 スターシアが目を閉じた。
「いい夢を見るんだ」
 ナムルが言った。
 小さくスターシアがうなずき、すぐに眠りに落ちた。
 いくつもの夢が重なった。


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