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カルビは体の毒を抜くため虎のナムルに抱えられて地中にいた。
意識がぶよぶよとしている。頭の中がゼリー状態だった。
何かを考えてみようとするが、考えはあちこちに拡散してまとまらなかった。
俺は……と、思った。俺は……誰だ?
やばいなあ。自分のことがわからなくなっているぞ。
きっと毒のせいだな。あれ? 毒ってなんだ? そうだ、〈銀の皇帝〉だ。あいつが出したメシを、俺は、頭にのせた……いやちがう……メシを腕にはめた……あれ? なんだっけ? おかしいぞ、わかんなくなってる……やばいなあ。でも、まあ、いいかな。
眠くなってきたなあ。
そのとき、ギュッとナムルの太い腕がカルビを抱きしめた。痛いほどに強く。
「しっかりしろ」という声が聞こえた。
「山の人間だってことを思い出せ」と言われた。
薄れてゆく意識の中で、ナムルの強い愛情を感じた。
それは一瞬のことだったかもしれないけれど、カルビはナムルと一緒にいた時間をすべて思い出した。いろいろな出来事が脳裏によみがえった。怒ったことや笑ったことや戦ったことや……お互いに共有した時間は、とても濃い時間だった。
鼻の奥がジーンとした。
それが、カルビをかろうじて引き戻した。
そうだ、俺は山の人間なんだ、と思った。
鼻の奥に、土の匂いがした。
はっきりと、土の匂いを意識した。
そのとき、土は力強いエネルギーをカルビの体の中に送り込んだ。
ビリビリと、そのエネルギーが伝わってきた。
土がカルビを助けようとしていた。
土に還れ、という言葉が山にはある。
すべての生きものの命は、生まれてその役目を終えると土に還りそのエネルギーを土にもどすのだった。
土は命のエネルギーを蓄えていた。
そのエネルギーは山に生を受けたものたちに分け与えられる。
グングンと山のエネルギーをカルビは吸収した。
体の中に新しい生命エネルギーがわきあがってきた。
「ナ……ナムル?」
カルビがつぶやいた。
「ああ、ここにいるぞ」
ナムルはカルビを強く抱いた。
「どうして?」
「バカヤロー! オレはいつだってお前と一緒だ!」
「ナムル……会いたかった!」
「オレもだよ」
「あっ、スターシアは……」
「上にいる。よし行こう!」
ナムルはカルビを抱えて地上に飛び出した。
「うわあああ!」
カルビとナムルを見て〈銀の皇帝〉の部下たちは驚きの声を上げた。
「スターシア!」
叫んでカルビが走る。
〈銀の皇帝〉ガッデムは意識のもうろうとしているスターシアの首をつかんで高々と吊るしていた。
「そこで止まれ! さもねえとこの姫君の首をへし折るぞ!」
ガッデムは残忍な笑みを浮かべた。
「ぬおおおおおおおお!」
カルビが拳を握って怒りをこらえた。
そのときだ。
握った拳の中に、グイグイと力がわきあがってきた。
カルビは驚いた。
「な、なんだ……これは……」
自分の拳を見た。
拳が薄く光り始めた。
圧倒的な力を感じた。
「ぬおおおおおおお!」
その拳をガッデムに向けた。
距離は10メートル。
拳が爆発した。カルビはそう思った。
だが、拳から放たれたのは、まぶしい光の束だった。
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