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「これは姫君、ご機嫌うるわしく」
と皮肉たっぷりの口調で、老僧が言った。
片目の機械レンズが冷たく光っていた。
「この野郎ーーッ!」
駆け出してきたナムルが、鎖でぐるぐる巻きのカルビを見て激怒した。
「おや、山の神もご一緒ですか。てっきり死んだのかと思いました」
老僧はあくまで冷静だった。
「ざけんじゃねえぞ! さあ、カルビを返してもらうぜ!」
ナムルが祭壇に上った。
スターシアは油断しない。じっと老僧の動きを見つめた。変な動きをすれば一刀のもとに斬るつもりだった。
ナムルが鎖をひきちぎった。
「カルビーーーーーーーーっ!」
その体をゆり動かしたが、カルビはぐったりしたままだった。
「カルビは毒を飲んだの……」
スターシアが言った。
「毒だと……」
ナムルがつぶやく。
「そう。たぶん、こいつが毒を食べ物に入れたの」
スターシアは斬ってしまおうかと思った。
「そう怒りなさんな。第一、わたしを斬れば解毒剤のありかがわからなくなりますよ。ほほほほ」
老僧は笑った。
ガッ!
と、ナムルが老僧の襟首をひっつかんで、高々と吊るした。
「おい! 解毒剤は!?」
「おや、まあ……乱暴なことを……」
レンズの眼がギュイイインと動き、キラリと光った。
「ナムル! 気をつけて! そいつの眼はあやしい術を放つの!」
と、スターシアが言ったとき、
「ガッウウウウ!」
うなり声を上げて、ナムルは老僧のレンズにかぶりついた。
ガシャッツと音がして、レンズは粉々に砕けた。
「ぎゃああああああああああ!」
と、老僧は悲鳴を上げた。
「あんまり人の心をもてあそぶんじゃねえ! 解毒剤は?」
ナムルは老僧を怒りの目でにらみつけて牙をむいた。
「た、助けてくれ……お願いだ……」
「解毒剤は!?」
「たのむ降ろしてくれ……その手を、離してくれ……苦しい……」
「……」
ナムルは手を離し、老僧を降ろした。
「ゴホゴホ……」
と老僧は咳込んだ。
その瞬間、フッと老僧の姿がかすむ。
「あっ! てめえ!」
とナムルが手を伸ばしたときは、老僧の姿は空間に消えた。
「あまり魔法教会に逆らいなさんな。ほほほほ」
声だけが残った。
「しまった!」
「カルビは?」
スターシアが駆け寄ってカルビを抱いた。
カルビの顔がしだいに青白くなってきた。
スターシアはカルビの胸に耳を当てる。
「かなり弱いけど、まだ心臓は動いてるわ」
「カルビがそう簡単に死ぬかよ! なっ、カルビ! 死ぬんじゃねーぞ!」
ナムルが吠えた。
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