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「カルビはどこ?」
スターシアは〈銀の皇帝〉ガッデムをにらみつけた。
剣は喉元に押しつけたままだ。
「あ、あいつは……魔法教会のヤツが……連れていくと……」
「そう! じゃあ、ここを開けて!」
「わ、わかった」
ガッデムが壁のボタンを押した。
ギュウウウウンと、壁が移動して出口が現れた。
「行こうナムル!」
と言いながら、スターシアは剣の柄でガッデムの脇腹を突いて出口に走る。
「うげげげげ!」
ガッデムが体をくの字に曲げて倒れた。
「あらあら、お姫さまにしては残酷な。腹は苦しいんだよな……」
と言いながら、ナムルもガッデムの脇腹を蹴り上げながら、出口に向かった。
(ああ、ひさしぶりにカルビに会えるんだな)
ナムルは熱いものがこみ上げてきた。
シーアスでの戦いで別れて以来だった。
あのとき、市街戦で魔法教会の招喚した魔物にぶざまにも負けた。
ナムルは地中深く隠れた。体をまるめて、まるで胎児のようになって、地中のエネルギーを吸収し体の傷を治した。
地中には大地のエネルギーが流れている。それはいろいろな命を育むエネルギーだ。
草花も樹も虫も動物も人間も、そのエネルギーを受け取っている。
山の国マウンティアでは、そのように信じられていた。
では、海の国シーアスではどうなのか?
実は、山の民と海の民には、環境による考え方の決定的な違いがある。
山の民は、大きな循環のなかで命をとらえる。たとえば、樹を植えて実がなるまでに一〇〇年かかっても、それは孫の時代の食べ物として考える。また、山火事があったとしても、その火によって樹が焼けて灰となり大地の肥料となって新しい芽を育てる。なかには、火の燃えることにより実を発芽させる樹もあるらしい。そうした環境のなかに生きる人間は、自然に順応し、遠くを見つめるようになる。
だが、海の民は違う。海の食べ物はいまそこにあるものだ。100年後の食べ物を育てるという発想はない。海は凶暴な牙で人間を簡単に殺す。だから生きている時しか信じていない。
考えてみれば、シーアスが経済的な拡大のなかでマウンティアを侵略したのは、必然的なことであったのかもしれない。
シーアスは未来のエネルギーを手に入れようとしたのかもしれない。
命の循環を人間の手によって人工的に作り出すことが、魔法教会の願いなのだ。
彼らは、「竜の肉」を食うことで不老不死を得られると信じていたし、「マナ」という秘宝によって命は再生すると考えていた。
だが、マナがどんなものなのか、まだ誰も知らなかった。
「カルビーーーーーっ!」
と、スターシアが叫んでいた。
建物から出ると、山の天気はガラリと変わっていた。
どんよりと雲が重く垂れこめて、今にも雨が降りそうだった。
〈銀の皇帝〉の山城には幾つかの建物が円を描くように並んでいた。
その中央は、祭事ごとを行う広場だった。
そこに、カルビはいた。鎖でぐるぐる巻きにされている。
横に立つ魔法教会の老僧が「ちっ!」と舌打ちして、駆け寄ってくるスターシアを横目で見た。
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