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「あなたが魔法教会に反乱したことは、すでに承知しております」
〈銀の皇帝〉ガッデムが分厚い唇の端をゆがめながらスターシアを見つめていた。
その隣に背中をいくぶん丸めて立っている魔法教会の老僧が、微笑んでいる。
「うう……」
まだ、スターシアの体は動かなかった。
あの老僧の冷たいレンズが体を縛っているのかもしれないと思った。
カルビは毒入りの食事をたくさん食べたので、ピクリとも動かなかった。
「うう……」
なんとかしなくちゃ、と思った。
「もう一度申し上げます。ムダです。姫君さま」
と、老僧が優しく言った。
スターシアが老僧のレンズの目を見つめた、その瞬間に、スターシアの意識の中にカラフルな色がチカチカと点滅した。
ふらりとした。
意識が真っ暗になった。
このままじゃ、体を支えていられないと思って、スターシアはどこかにつかまらなくちゃと手を伸ばした。
その手を強くつかまれた。
(カルビなの?)と思った。
だが、そんなことはあるはずなかった、カルビはいまそこの床に倒れているのだ。
じゃあ、ここはどこ?
と思ったとき、パッと目の前が明るくなった。
まるで暗い洞窟でたいまつをつけたときのように。
スターシアは、やっと、自分が別な場所に運ばれているのだと知った。
あの老僧の目を見て意識をなくしていたらしい。
手をつかんでいたのは、巨大なクモだった。
「わっ!」
と、スターシアは悲鳴を上げた。
黒と白のタイルを張った床に、毒々しい色のクモがいた。
天井は高く、なにかのレリーフがほどこされているが暗くてわからなかった。
クモは、ザワザワと動いて、スターシアの体にのしかかった。
「やめてーーーーっ!」
悲鳴は、クモの動きを早くした。
シャキシャキとクモの口が開閉する。
スターシアは手足をバタバタさせてもがいたが、クモの八本の足がその自由を簡単に奪った。
カシャ。
と、音がして誰かが入ってきた気配がした。
「スターシア姫君さま……」
好色そうな顔で〈銀の皇帝〉がスターシアをのぞき込んだ。
「よるな!」
スターシアは叫んだ。
「おやおや。そんな言い方は失礼だ。そのクモは俺のペットでね、命令を理解できるんだ。食えと言えばあなたを食うし、やめろと言えばやめるんだが……」
「なにが欲しいの!?」
「あんただ」
「わたし?」
「そうだ。あんたと結婚して、俺がシーアスの王に即位するってのはどーだ?」
うれしそうな顔で〈銀の皇帝〉が言った。
「ふざけないで!」
あんたみたいな無教養で粗野な男がシーアスの王になどなれない。というセリフは言わなかった。
それでも、スターシアの表情だけで、十分にそのことが伝わった。
「お高くとまるな! いまやシーアスの王位など消し去りそうじゃないか!」
「国は滅びても、王位は継承してみせるわ! あなたなどに王位を汚させないわ!」
「そーかな?」
ググググッと、クモの体重がスターシアにのしかかった。
「うっ」
スターシアの顔が苦痛にゆがんだ。
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