|
〈銀の皇帝〉の山城のなかは、大騒ぎとなった。
カルビとスターシアは大変丁重なあつかいを受け、大きくはないが豪華な部屋のなかで接待を受けた。
ふたりの前には、果物や調理した肉などが出されていた。
「ここまで来たら心配してもしようがない」
と言いながら、カルビはムシャムシャと食べ始めた。
〈銀の皇帝〉は部下たちと、このふたりのあつかいについて相談しているらしかった。
しばらくの時間がたった。
カルビは、テーブルの上に出されたものをほとんど食べた。
「少食だな」
「そうね」
スターシアは果物を少し食べただけだった。
「これは、シーアスの姫君さま」
と、ドスのきいた声とともに、胸板の厚い長身の男が入ってきた。
体中に銀の装飾品をつけ、まるで王のような男だった。
黒髪を後ろで束ね、背中にたらしている。
「どうも」
と、カルビが立ち上がって微笑んだ。
「スターシアです」
椅子から立ち上がらずにスターシアが目だけで挨拶した。
「これは失礼いたしました。わたくしがこの山を仕切っておりますガッデムです。それにしても、シーアスの姫君さまが、こんな山のなかにいらっしゃるとは、どうゆうことですかな?」
言いながら、向かい合った椅子に腰をかけた。
「あのね。姫さまは王宮騎士団でも指折りの剣の使い手でなんだ。それで、剣の腕のたつやつを探して旅をしてるというわけ」
カルビが口から出まかせを言った。
「あなたは?」
「俺は、姫さまの従者でカルビ」
「そうですか。旅の途中で立ち寄られたのですか」
「そう」
「しかし……なぜ、魔法教会に反乱したのですか?」
落ちついた口調で、〈銀の皇帝〉ガッデムは言った。
「!?」
スターシアは体を硬くした。
もう少しで、剣に手をかけるところだった。
「あははは。そんな噂が流れているんだ」
と、カルビがとぼけた。
どうせ、シーアスに確かめに行く時間などあるはずがない。ここは徹底的にウソをつけばいいと思った。
「噂ですと……しかし……」
「しかしもかかしもないじゃん。魔法教会に対して反乱したなら、ここへはこないと思うな。だって、ここは魔法教会と取り引きしてるんだろ」
「そうですか。わかりました……」
と、ガッデムがうなずいたとき、魔法教会の僧服をつけた老人が入ってきた。
(あっちゃ……)
心の中でカルビは舌打ちした。
「いけませんな、ウソをついては」
老人は、片目に機械の目をつけていた。そのレンズがふたりを冷たく見つめた。
「しかたないわ」
と、スターシアが剣に手をかけた。
「ムダですよ。姫君さま」
ガッデムが笑った。
「!」
スターシアは剣が抜けなかった。
カルビがガバッ! と椅子から立った。
だが、立った瞬間に体のバランスをくずして、大きくのけぞって倒れた。
まるで自分の体じゃないみたいだった。
(ちくしょう、食い物に毒を……)
薄れてゆく意識の中でカルビは思った。
|