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「いいわ。それしか、あのなかに入る手はなさそうね」
と、スターシアが決心した。
「心配いらないよ。あいつら、きっとシーアスの姫さまが来たらびっくりして中に入れるさ。そして〈銀の皇帝〉がじきじきに挨拶に出てくる」
カルビは自信満々だった。
やわらかい午後の陽射しが、厚くかぶさるように重なる木の葉の緑を鮮やかに映していた。
その葉と葉の間に小さく開いた空間から、スターシアは空を見ていた。
いろんなことが脳裏をかけめぐった。
ほんの少しの間に、自分のまわりはなんて大きく変わったのだろうとスターシアは思った。
シーアスの王、アブラック三世はどうしているのか?
魔法教会に反乱することに同意してくれたカルナックや王宮騎士たちはどうしているのか?
最後まで忠誠心をつくしてくれた従者のネコットはどうしているのか?
そんなことをひとつひとつ思い出していたら、目頭が熱くなってきて、見上げた空がかすみはじめた。
そんなところをカルビに見られるのはイヤなので、
「さあて、また大変な戦いになるかもしれないわね」
と、わざと大きな声を出した。
「先に進むしかないんだよな」
カルビが言った。
「えっ?」
その意味を計りかねて、スターシアが聞き返す。
「結局さ、シーアスの魔法教会をぶっつぶさないかぎり終わらないのさ。なんにも。小さな後悔をしていてもしかたない。いま、全力で前に進まないと、大きな後悔を背負うことになると思う」
スターシアはカルビの顔を見つめた。いつのまにか、カルビが大きく成長していることに驚いた。
それにひきかえ、自分はなんてみじめったらしく、じくじくと過去のことを振り返っているのだろう……と、思った。
元は、自分が火をつけたことじゃないか。
スターシアは唇を強く噛んだ。
「俺だって、ナムルがどーしてるか心配だい。ウキウキのことも……でも、どーしようもないことを心配してもしようがないじゃないか。やつらはやつらなりになんとかしてるさ。そー思うことだ。だめなら、運がなかったんだ」
カルビは自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
ふたりはしばらく黙って歩いた。
「どこに行くんだ!」
かなり強い声がとんできた。
振り返ると、武装した兵隊らしき男が三、四人深い茂みのなかから現れた。
兵隊らしきと思ったのは、全員が、バラバラな装備をしていたからだ。
隊というにはいささか統率に欠けていた。
まあ、見たところ、野盗に毛の生えた程度のものだった。
「〈銀の皇帝〉に会いに行くところだ」
とカルビが悪びれずに言った。
「なに!」
一同に怒気の色が浮かんだ。
「下がれ、下郎! わたしはシーアスのスターシア姫である! 〈銀の皇帝〉に挨拶に参った」
スターシアはさすがに本物の姫であった。いちいち、威厳があった。
「あっ、あのう……姫さまでいらっしゃいますか……」
こんな下っ端の兵隊に事の判断をするのは不可能だった。
とにかく、シーアスの姫さまに逆らったら大変だという思いしかなかった。
「案内せい!」
ピシャリとスターシアが言った。
「ははっ!」
兵隊が頭を下げた。
カルビはスターシアにウインクした。
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