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「さあて、ついでに隣の山もやっておくか」
「たぶんあれが〈銀の皇帝〉のすみかね」
カルビとスターシアは霧のかかった山を見上げていた。
「あそこにもなぐり込むのね」
「そうだよ」
「そーやって、どんどんこの山の国の野盗たちをやっつけちゃうわけ?」
「うーん。わかんないけど、それもいいかなって思ってるんだ。それで、みんな集めて、怒ってやる! おまえたちがバカだから、この国はバラバラで、みんなが苦しんでるって。ほんとに大将なら、弱いヤツを助けろってね」
スターシアはカルビの真剣な言い方がおかしくて、クスッと笑った。
「おかしいかな」
カルビは不満そうだった。
「あなたのそういうまっすぐなところスキよ」
「スターシアにほめられると、なんだかうれしくなるよ」
そんなことを言いながら、ふたりは山のなかを歩いた。
これから先に戦いがあるのに、まるでピクニックにでも来たようにリラックスしていた。
マウンティアは、先の七年戦争において隣国シーアスに破れ、いまでは、国としてのまとまりなどはどこにもなかった。あちこちの山々に、まるで野盗のような連中が、我こそはお山の大将とばかりに砦を築き、縄張りと称してあちこちの村や町から金品や食料を強奪していた。
いくつかの主要な都市(たとえば鉱山都市や狩猟都市など)はシーアスから派遣された将軍と軍隊が占領して守っていた。そのかわり、山の国の文化や習わしは、ことごとく海の国シーアス風に変えられ、シーアス税と言われる悪税が取り立てられていた。
これらのシーアスが占領している都市になぐりこむことも、カルビは考えたが、そこが戦火にみまわれたとき市民が逃げるところがない。山に逃げれば、そこには野盗が待っているという状態では、苦しむのは市民ということになる。
山からかたづけよう。
カルビはそう決意した。
とにかくマウンティアをまともな国の状態にしてから、シーアスに対抗して、あの魔法教会をぶっつぶそうと考えた。
なんとも壮大な計画だった。
だが、カルビには、妄想を具体化する力と行動力があった。
(夢で終わるかもしれないけど、何もしないよりはいい。それで死ぬのだったら今日はいい日だと言える)
そんなことを思いながら歩いていた。
「まあ、すごいわ……」
と、スターシアが山の頂上を見上げて声をあげた。
そこには、銀色に輝く仏塔のようなものがそびえ立っていた。
「そうか、このあたりは銀が取れるんだ。だから〈銀の皇帝〉か……それにしても、よくシーアス軍に占領されなかったな」
と、カルビがつぶやいた。
だが、その疑問もすぐに氷解した。
〈銀の皇帝〉の持つ鉱山には魔法教会の紋章の入ったコンテナが山積みされていたのだ。
「どうも〈銀の皇帝〉というのは魔法教会と裏で取り引きしてるらしい」
「そうね。これが全部、魔法教会の資金になるわけね」
なにを取り引きの条件にしているかわからなかったが、どうせやばいものに違いないとカルビは思って、眉を曇らせた。
「なかなか、ここは大変だ」
あまり大変そうには聞こえなかった。どこか空気の抜けたみたいな言い方だった。
しかし、確かに大変そうではあった。
なにせ、あらゆるところに武装した兵隊が見張っていた。
「どうするの?」
あの〈熊の砦〉のようなわけにはいかないと、スターシアは思った。
「なあ。スターシア姫が従者を連れて立ち寄ったってのは?」
「えっ? お芝居するの……」
そんなうまくいくのか心配だった。
「あいつら魔法教会と裏でつるんでるのなら、きっとシーアスの事をいろいろ知ってるさ。もちろんスターシア姫の事もね」
カルビがニコッと笑った。
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