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「わははははは!」
突然ブラックベアーが大声で笑った。
そこにいた全員が、頭がおかしくなったのかと思った。
「いや、まいった。こりゃ、俺の人徳のなさだ! さあ、勝手にしてくれ。だがな、このふたりには手を出すなよ。こいつは俺とタイマン勝負して勝ったんだ、正々堂々とな。俺のメンツがつぶれちゃうからよ」
と言って、ドッカリその場に座り込んだ。
「行けよ。ここから逃げろ!」
ブラックベアーはカルビに言った。
その顔が、ほんの少しゆがんで悲しそうに見えた。
(こいつ、なかなかいいヤツだな)
カルビはうれしくなった。
「早く逃げろ!」
「いいや、そうもいかねぇよ」
カルビが答えた。
「なにしてんの!」
バックレッグが野盗どもに向かって叫んだ。
「やっちゃえ!」と誰かが言った。
その声で「うわーーー!」となった。
弱いやつらは集団じゃないとなにもできない。
「だああああっ!」
カルビがいきなり地面を拳でたたいた。
髪の毛が逆立っている。
なんと、なぐった地面がビリビリとふるえて、カッと割れた。
割れ目は、野盗の間をピーーーーーッ! と突き抜けた。
カルビにはなにかを感じる不思議な力があった。
このときも、カルビはそれを感じた。感じるままに、地面をたたいた。
何人かの野盗が「うわーっ!」と逃げた。
そして何人かは腰を抜かした。
もう野盗どもに殺気はなかった。
「わははは、まいった。地面を叩き割るなんて、なまじの人間にはできねえよ。あんたは、すげえ人物なんだな」
と、ブラックベアーが感心した。
「ちくしょう!」
バックレッグは叫ぶと、ダッと山のなかへ逃げた。
「あの野郎……〈銀の皇帝〉に泣きつくつもりだな」
ブラックベアーがため息をつき、
「さあ、あいつを追いかけてえヤツは、ここを出て行ってくれ!」
と、野盗どもをジロリと見渡した。
野盗どもはシュンとしてうなだれている。
「だめだと思う。あんたは、こんなヤツらを子分にしていばっていても、山の国はなんにも変わらない」
カルビが言った。
「山の国が……変わらない……どうゆうことだ?」
「自分で考えなよ。じゃあ、俺たちはこれで。もう、村人を困らせるような事はするなよな! 約束だぜ!」
「わかった」
と、ブラックベアーは誓った。
カルビとスターシアが歩き出した。
その後ろ姿を呆然とブラックベアーが見つめていた。
「いいの?」
歩きながらスターシアが聞いた。
「なにが?」
「あのままで」
「いいさ。もうブラックベアーはわかったと思う。野盗なんかやっててもしようがないと。それがわかる男だと思う」
「カルビは人相判断までするの?」
「いいや。ケンカするとね。わかるんだよ、相手の器が」
「器ね。ときどきカルビは変なことを言うね」
「変なことかな」
「子どものくせに」
「子どもも大人もないや。ダメな大人は、相手の器がわからないヤツだ」
「ふーーん。なんだか、とってもカルビが大きく見えるわ」
「スターシアもなかなか素直になったね」
「こいつ」
ふたりは笑った。
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