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山頂を越えて、少し下ったところに大きな木組みの砦があった。
「どうするの?」
スターシアが聞いた。
「考えてもしようがないから、いきなりなぐり込みだな」
カルビの決断は早かった。
「そうね」
スターシアも同意すると剣を抜いた。
そしてふたりは山肌を走り降りた。
「敵だーーーーーーーーっ!!!」
〈熊の砦〉のなかから、声があがった。
カルビとスターシアは、門を蹴破って突入した。
いざとなったら逃げればいいとカルビがスターシアに言った。
腕には自信があった。
それより、砦のなかをいろいろ探り出す時間がなかった。
なかの様子を知るにも、なぐり込みが、乱暴だが手っ取り早かった。
「なかなか人数がいるぞ」
「そうね!」
かかってくる人間をぶっ倒しながら、ふたりは奥へ奥へと走った。
「殺さないでねカルビ」
「わかってるよ。殺せば恨みが残るって言いたいんだろ」
「そうね。山の国をつくりたいのなら」
「ああ、弱いやつは斬らねえよ」
ヒュン! と、山刀を振る。
野盗の足を斬った。
ドッと、倒れる。
「その傷なら、大事にすりゃ一ヶ月で治るぜ」
と、言いながら、次々に、野盗の群れを倒した。
「えええ! どけっ! バカども!」
砦のなかの小屋から出てきたのは、小山ほどあるかと思う大男だ。
「ほう……強そうだな」
カルビはダラリと山刀を下げて男を見た。
(こりゃ、本気でいかねえとヤバいかな……)と思った。
「俺は、〈熊の砦〉の大将ブラックベアーだ!」
「なるほど、黒いな」
「るせえ! てめえは、なんの恨みがあって、なぐり込んできやがった! てめえ、隣山の〈銀の皇帝〉の手先だなッ!」
「そんなヤツは知らねえよ。村人が困ってるから、この砦をぶっつぶしにきたんだ」
「ふん! ふざけた野郎だ。一応、名前は聞いておこう。死んじまったら、聞けねえからな」
「それ、冗談のつもりかよ。ざけんなよ。俺の名前は……カルビだ!!!」
と言った瞬間に、跳んだ。
「ぬおおおお!」
ブラックベアーが剣を振る。
その剣に、タッ! と足をかけて、さらにジャンプする。
(なんちゅう運動神経だ!)とブラックベアーが思ったときには、バシッ! と脳天を山刀の峰でたたかれていた。
グアアアアアアン! と脳味噌がゆれた。
はじめてブラックベアーは、こんなに簡単にあしらわれた。
屈辱だった。
みんなの手前、なんとしても、ここで倒れるわけにはいかなかった。
「ふんにゃらげっ!」
わけのわからん気合いを入れて、ブラックベアーは倒れる寸前で、持ち直した。
「あれ? 倒れなかった……」
カルビが、着地しながら振りかえってつぶやく。
と、その時、ヒュンヒュン! とうなりをあげて、黒いムチがカルビの足に巻き付いた。
「な、なに!」
「おほほほほほほほ! あたしはバックレッグ! ブラックベアーの妹だ!」
「こんにゃろ!」
カルビが叫んだとき、バックレッグがムチを引いた。勢いで、カルビが倒れる。
「ぐおおおお! よくやった! そいつの首をへし折ってやる!」
とブラックベアーが凶悪な顔で言ったとき、
「動くな!」
ピタリとスターシアの剣がブラックベアーの首すじに当たった。
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