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ICON 新二都物語カルビサーガ 第76話

 山頂を越えて、少し下ったところに大きな木組みの砦があった。
「どうするの?」
 スターシアが聞いた。
「考えてもしようがないから、いきなりなぐり込みだな」
 カルビの決断は早かった。
「そうね」
 スターシアも同意すると剣を抜いた。
 そしてふたりは山肌を走り降りた。
「敵だーーーーーーーーっ!!!」
〈熊の砦〉のなかから、声があがった。
 カルビとスターシアは、門を蹴破って突入した。
 いざとなったら逃げればいいとカルビがスターシアに言った。
 腕には自信があった。
 それより、砦のなかをいろいろ探り出す時間がなかった。
 なかの様子を知るにも、なぐり込みが、乱暴だが手っ取り早かった。
「なかなか人数がいるぞ」
「そうね!」
 かかってくる人間をぶっ倒しながら、ふたりは奥へ奥へと走った。
「殺さないでねカルビ」
「わかってるよ。殺せば恨みが残るって言いたいんだろ」
「そうね。山の国をつくりたいのなら」
「ああ、弱いやつは斬らねえよ」
 ヒュン! と、山刀を振る。
 野盗の足を斬った。
 ドッと、倒れる。
「その傷なら、大事にすりゃ一ヶ月で治るぜ」
 と、言いながら、次々に、野盗の群れを倒した。
「えええ! どけっ! バカども!」
 砦のなかの小屋から出てきたのは、小山ほどあるかと思う大男だ。
「ほう……強そうだな」
 カルビはダラリと山刀を下げて男を見た。
(こりゃ、本気でいかねえとヤバいかな……)と思った。
「俺は、〈熊の砦〉の大将ブラックベアーだ!」
「なるほど、黒いな」
「るせえ! てめえは、なんの恨みがあって、なぐり込んできやがった! てめえ、隣山の〈銀の皇帝〉の手先だなッ!」
「そんなヤツは知らねえよ。村人が困ってるから、この砦をぶっつぶしにきたんだ」
「ふん! ふざけた野郎だ。一応、名前は聞いておこう。死んじまったら、聞けねえからな」
「それ、冗談のつもりかよ。ざけんなよ。俺の名前は……カルビだ!!!」
 と言った瞬間に、跳んだ。
「ぬおおおお!」
 ブラックベアーが剣を振る。
 その剣に、タッ! と足をかけて、さらにジャンプする。
(なんちゅう運動神経だ!)とブラックベアーが思ったときには、バシッ! と脳天を山刀の峰でたたかれていた。
 グアアアアアアン! と脳味噌がゆれた。
 はじめてブラックベアーは、こんなに簡単にあしらわれた。
 屈辱だった。
 みんなの手前、なんとしても、ここで倒れるわけにはいかなかった。
「ふんにゃらげっ!」
 わけのわからん気合いを入れて、ブラックベアーは倒れる寸前で、持ち直した。
「あれ? 倒れなかった……」
 カルビが、着地しながら振りかえってつぶやく。
 と、その時、ヒュンヒュン! とうなりをあげて、黒いムチがカルビの足に巻き付いた。
「な、なに!」
「おほほほほほほほ! あたしはバックレッグ! ブラックベアーの妹だ!」
「こんにゃろ!」
 カルビが叫んだとき、バックレッグがムチを引いた。勢いで、カルビが倒れる。
「ぐおおおお! よくやった! そいつの首をへし折ってやる!」
 とブラックベアーが凶悪な顔で言ったとき、
「動くな!」
 ピタリとスターシアの剣がブラックベアーの首すじに当たった。


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