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あくる朝。空が白みはじめた頃。
仙人はふたりを起こし、簡単な朝食をふるまった。
「よく眠れたかね」
「はい」
スターシアが答えた。
「すっげえ眠れたよ。キューって感じ」
カルビは元気がいい。
「ところで簡単なお願いがあるのじゃ」
「いいよ。メシ食わせてもらったし、あったかいところで寝かしてもらったんだ。なんだってやるよ。薪割りかい、それとも水くみ?」
カルビが両手をグルングルンまわした。
「いや……そーいうことじゃない。この裏山の向こうにある〈熊の砦〉というところに野盗が住んでおってな。村人をたいそう苦しめておると聞く。どうじゃ、そこで、あんたらふたりの力で〈熊の砦〉を壊し、野盗をとっちめてくれんかのう……」
仙人は猫なで声でふたりに言った。
「えー、そんな難しいお願いなの……」
カルビが大きくのけぞるマネをした。
「なんとかならんかねぇ」
仙人が手を合わせた。
「やります」
スターシアがきっぱりと答えた。
「えー、マジ……」
「やろう。ねっ、カルビ」
「……わかった」
カルビはスターシアに言われ渋々うなずいた。
「ありがとう」
仙人はふたりの手を取って喜んだ。
「じゃ、ボチボチ行くとするか」
と、カルビが立ち上がる。
向かうのは〈熊の砦〉だ。
「スターシア。いいのかよ、こんなことひきうけてよ」
裏山への道を歩きながらカルビがつぶやく。
「いいじゃない。悪いことじゃないわ。だって、村人が困っているんでしょ。助けなくちゃね」
「でも、シーアスはどうすんだよ」
「わたしたちだけでシーアスは倒せないわ」
「まあね」
「将来のために、いまは、わたしたちを必要としている人のために力を使うべきだって思うの」
「なるほどねぇ」
カルビとしても困っている人たちを見すごすことはできない性分だった。
スターシアは昨晩、仙人の言った〈真の王者〉たる者の意味を考えていた。もしかしたら、それはカルビじゃないのかと。
「〈熊の砦〉はあの頂上の向こう側だ」
カルビが言った。
スターシアは腰に剣を下げて、銀の胸当てをつけている。
カルビは仙人にもらった山刀を腰につるしているだけだ。これから山のなかで野盗と戦おうというには、いかにも軽装備である。
「山のなかは装備が軽い方がいいんだ」
カルビがなにげなく言った。
「そうなんだ」
「そうだよ。谷を駆け、木に登り、ってことになるもの」
「すばやさと体力が必要なのね」
それが山の戦い方だな、とスターシアは思った。
もともと、スターシアは剣の腕がたつ。なにごともひとつ秀でていれば、応用がきくものなのだ。
「だいじょうぶ。ついていくわ」
「よし。じゃ、登るぞ!」
ダッ! とカルビが駆け出す。
そのあとを、スターシアが追った。
グングンとカルビが登ってゆく。
疲れを知らないような登り方だった。
スターシアもがんばって、カルビの足手まといになるまいと必死に追った。
シャキィン!
うむを言わせぬ、問答無用の攻撃を、間一髪、カルビは腰の山刀でよけた。
「なんだよ」
命のやりとりにしては、ぼんやりとしたカルビの言い方だった。
それが、おかしかった。
「うおおおおおお!」
叫びながら、剣をブンブンふりまわして野盗が3人、立ちはだかった。
瞬時に「こいつら、シロウトだな」とカルビは感じた。
剣をふりまわすことへの怯えが見えた。
「こんなヤツら斬ってもしようがないよな」
山刀を見つめながら、そう思った。
「であああああああ!」
「バカ野郎!」
カルビは跳んだ。そして、空中から、三人を足蹴にした。
ほんとうに一瞬のことだった。
スターシアが追いついたときには、3人の野盗が大の字に地面にのびていた。
「襲われたの?」
「たぶん野盗の見張り役だろう」
カルビは鼻くそをほじりながら笑っている。
「う〜〜ん」
「なあに?」
「いやね。こいつら弱すぎるんだ……」
「それが?」
「こんなやつらがのさばってるのかと思うと、けっこう腹が立つ」
カルビの言い分に、クスッとスターシアが笑った。
やっぱり、カルビは力が強い人間が好きなんだと思った。
「弱いやつぶっつぶしてもさ、なんも偉くないよな。つまんねえよ」
「砦には、もっと強いのがいるかもね」
「そう願いたい。さて、行くか!」
カルビが再び歩きだした。その歩みは早い。
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