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ICON 新二都物語カルビサーガ 第70話

 人があって国があるのか。国があって人があるのか。
 その答えは権力を持たぬ者と持つ者で違う。
 国には闇の部分がある。
 表は正義を謳いながら、戦争では人を殺せる。
 ひとりを殺せば犯罪だが戦争で1000人殺せば英雄なのだ。
 そうゆう矛盾が組織には必ずある。
 矛盾とは、なにものをも貫き通す両刃の剣、矛と、なにものをも防ぐ盾が存在するということだ。
「おまえは侵略者に対して無抵抗でいられるのか」と問われれば、誰もが「否」と答える。「では武器を持とう!」となる。こうして国は武装する。だが、武力は温存することができない。いつか歯止めがきかなくなる。武力は使ってこそ武力なのだ。
 平和のための武力など存在しない。
 武力は行使すれば、誰かが必ず不幸になるのだ。
 だが悲しいことに人間はあらゆる欲を持っている。持っているから人間であり、そこに喜劇も悲劇も存在する。
「人間は弱い生き物です」
 と、魔法教会の老僧が言った。
「だから?」
 テーブルに座って食事をしている国防大臣のゲルが顔を上げた。
「たよるものが必要ですよ」
「だから軍があるさ」
「いえ、その軍であっても、こころのよりどころが必要です」
「ほう……」
 と、ゲルがフォークを置いて老僧の顔を見つめた。
 なごやかな食事会のようだが、じつは教会と軍とのかけひきの場だった。
「王という存在がいない以上、軍は、いったい何を正義になさいますか?」
「国民じゃ」
「ですが、その国民は神じゃない」
「あたりまえだ」
「いつでも軍が殺せる国民は正義になりますかな」
「…………で、魔法教会をいまのまま存続させろと言うのか」
「はい。いま以上に……」
「まさか、軍の指揮権をよこせなんてことじゃないだろうな」
「いいえ。任命権を」
「なんのだ!」
「最高指導者」
「…………」
 ゴクリとゲルがツバを飲んだ。
「初代最高指導者はあなたに……」
「おまえもそうとうな悪だな」
 ゲルはふたたびフォークを持つと、竜の肉にくらいついた。
「あなたさまほどでは……」
「ところで、フルブ、ホロンとふたりの司祭を短期間に失い混乱はないのか?」
「はい。それは御安心下さい」
「今度の司祭は誰だ?」
「メディセンです」
「なんだと? おかしな薬品使いか! 司祭は誰でもいいのか」
「あれには、カリスマ性があります。若い僧がついてきます」
「わかった。魔法教会のことはおまえにまかせた。軍は、教会を保護する」
「ありがとうございます」
 老僧とゲルのかけひきは終わった。
「さて。強力な軍事政権をつくるには資金がいるな」
「税収と献金があります」
「なるほど。国民は税で苦しみ、その苦しみから解放されるために神に献金するか……はははは。うまいな」
 と、ゲルは肉をほおばった。


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