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ICON 新二都物語カルビサーガ 第61話
 いったい人々は何のために戦うのだろう。
「わたしは、わたしの信じるもののために戦います!」
 スターシア姫は、声に出して言った。
 まさに、自分の未来への宣言のようでもあった。
 その道がどんなに苦難の道であっても、スターシアにはもうもどる道はなかった。
「わたしの命とひきかえにしても、わたしはカルビを助けます!」
 スターシアはこのとき奇跡を信じた。
 バアアアアアーーーーーーン!
 ものすごい音が鳴り響いて、天井の一角がくずれた。
「ふざけんじゃねーーーーーーーーーーーぞ!」
 教会の中に舞い降りたのは、黒い翼を大きく広げた虎、山の神ナムルだった。
「ナムル……」
 スターシアはつぶやいた。
「うりゃ! カルビ! なにグダグダしてんだ!」
 飛び込んできたナムルがカルビに蹴りを一発見舞った。
 自由のきかないカルビがころがる。
「なにするの! カルビは術に縛られているのよ!」
 スターシアがカルビをかばう。
「うるせえ! こんなドジふみやがって! ったく!」
 ナムルは怒っていた。
 ひどく怒っていた。
「カルビと俺はいいコンビだったんだ……おまえが現れて、なんかヘンなんだ!」
 ナムルは仲間はずれにされたと思っていた。
「あなたがカルビと友達ならなんとかして!」
 山の神ナムルなら、なんとかできるはずだとスターシアは思った。
「こんな術は俺には解けねえ! だが……」
「だが……?」
「とにかく、ここから連れ出すことだ!」
 ナムルはカルビを抱えると、スターシアを見て一瞬にらみつけると、
「さあ、おまえも乗れ!」
 と、言った。
「うん!」
 スターシアは、大きくうなずいた。
 ナムルは本当はいい虎なのだと思った。
「早く乗れ!」
 ナムルはスターシアを乗せると教会から飛び出し、グーーーーーーーンと一気に上昇した。
 夜の月が大きかった。
 ナムルは月に向かって飛んだ。
 青い月の光に包み込まれるような気がした。
 スターシアは、夜の乾いた空気を胸いっぱいに吸い込んでみる。
 胸のなかのイヤなことを全部きれいな空気で洗い流してしまいたかった。
 肺のなかがいっぱいになるまで空気を吸った。
 みんな自分が巻き込んだことだとスターシアは思った。
 それがつらかった。
 唇を噛んだ。
「うっ」と嗚咽をもらす。
 風がその小さな声をかき消してくれた。
 風にこの悲しみを全部飛ばして欲しかった。
「うわーーー」
 と、スターシアは声をあげて泣いた。
 肺のなかの空気をすべて吐き出すかのように。
 月の光がスターシアの泣き顔を照らしていた。


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