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ICON 新二都物語カルビサーガ 第59話

「うおおおおおおおおおおお!」
 カルビがもう一度吠える。
 野性の声だった。
 スターシアを守りたかった。
 それは、ナラヤーナの樹の下の約束だった。
「うおおおおおおおおおおお!」
 どうしたことだ、声を上げると体中に新しい力がみなぎってきた。
(男の子は、女の子のために戦うんだ!)
 そう思った。
 拳に力をみなぎらせる。
「どあああああああああああ!」
 渾身の力をこめて、カルビは銀の怪物をなぐった。
「ぎゃああああああああああ!」
 怪物は、電気に撃たれたように棒立ちになって、そのままバタンと倒れた。
「スターシア!」
 カルビが駆けよる。
「カルビ!」
 スターシアはひとつ年下の少年カルビを、このとき特別な気持ちで意識した。
 まだ愛というほどには成熟していない淡い気持ちだった。
 だが、強烈にカルビを心にとどめた。
「ねえ、その手袋はなに?」
 スターシアは、カルビがいつの間にかしている手袋を見つめた。
「これか? これは、子どもの頃にもらったんだ」
「ふーん」
「じいさんにもらったんだ」
「誰? その人?」
「山のじいさんさ。すごい力を持っていてね、俺にいっぱい技を教えてくれた」
「そのひとが、手袋を?」
「そうだよ」
「見せて?」
「だめだよ!」
「なんで?」
「だって、人に貸しちゃだめだって……!」
「そう。ムリ言ってごめんね」
「いいさ。もしかしたら、いつか貸せるかも……。そのときは、まずスターシアに貸す」
「ありがとう」
 にっこりとスターシアが微笑んだ。
 その笑顔が、カルビは好きだと思った。
「さあ、行こう! あの祭壇の下に教会の秘密があるはずだ!」
「うん!」
 カルビとスターシアが、ついに神聖にして犯しがたい魔法教会の祭壇に足を踏み入れた。祭壇につながる階段には、周りが金の糸で刺繍された、血のように赤い布がかけられていた。
 階段をのぼるスターシアの足が小さく震えた。
 スターシアの意識の中には、いかに魔法教会が悪であろうと、長い間にすりこまれた神聖なものとしての教会があった。
 神を踏みにじっているような気がした。
「どうした、スターシア?」
「ううん。なんでもない」
 スターシアは精一杯、平静さを保とうとした。
「下がれ! 罪深き者よ!」
 祭壇の奥から、荘厳な声が響いた。
 それは、司祭フルブの声だった。


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