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ゆがみの中は、粘着質な空間だった。
遠くにぼんやりと光が見える。
「あれが、きっと出口だ……」
「そうね」
カルビはスターシアの手をしっかりと握っていた。
それが、スターシアにとってうれしかった。
ふと、スターシアの心の中に、あの丘の上に立つナラヤーナの樹が浮かんだ。
なぜ、ナラヤーナの樹が浮かんだのかはわからなかった。
だけど、樹は暖かだった。
その樹のやさしさと、いま手を通して感じるカルビの暖かさが同じに思えた。
「カルビ……」
「なんだ?」
「ありがとう」
スターシアは、命の危険をおかしてまで、自分たちに味方してくれたことに感謝した。
「別にいいよ。そんなこと言わなくて。暗いから、手を握っているだけさ」
と、カルビはスターシアの言葉を勘違いしていた。
「うん」
スターシアはあえて訂正しなかった。
こうして、つなぎあった手と手で、いつかシーアスとマウンティアがお互いに理解できるように導きたいと思った。
心がそんなふうに通じあえるといいなと、スターシアは素直に思った。
グイッとカルビの手が強く握ってきた。
スターシアはハッとした。
「出口らしい……」
「そうね」
「さて、どんな相手が飛び出してくるか?」
「楽しんでる?」
「ああ、楽しい」
「怖くないの?」
「怖くない」
「死んじゃうかもしれないのに?」
「だって、いつかは死ぬんだ。ならば、俺は生き生きと死にたい!」
「カルビは、ヘンな子だね」
「そうかな?」
「そうだよ」
こうしてカルビと話していると、こんなに緊迫した場面なのに、なんだかピクニック気分になることをスターシアは発見した。
「どんなことがあっても、俺はおまえを守るからな!」
カルビは、強く言った。
「うん!」
スターシアがうなずいた。
うれしかった。
気持ちがジンジンとした。
ギュッと、カルビの手を握った。
その手をカルビは握り返し、
「ありがとう」
と、言った。
「えっ?」
スターシアは聞き返した。
「いま、好きだと言ったろ」
「…………」
スターシアはドキドキした。
だって、口に出しては言わなかった言葉だった。
心の中で思った気持ちだった。
それを、カルビがわかってしまった。
「俺、好きだと言われたことないからさ……いい気分だ。俺もスターシアが好きだ。だから守るんだ!」
ニッコリとカルビが笑った。
スターシアは無言でうなずいた。
「行くぞ!」
カルビがスターシアの手を引いた。
(カルビとなら、どんな運命が待っていようと切り開ける)
と、スターシアは思った。
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