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ICON 新二都物語カルビサーガ 第55話

「助けて下さい、神さま……」
 剣を構えたネコットは口の中でつぶやき、
「かかって来い!」
 と言った。
「こいつらは、生きている人間じゃない……こんなやつらにかまわず逃げろ!」
 伯爵がネコットの肩をつかんだ。
「いやです! わたしだけ逃げるなんて!」
「命は大事にするものだ! おまえは騎士ではなく、姫の従者なのだぞ! 姫を探し、お守りしろ!」
 と言った瞬間、バッカス伯爵は動けぬ体で剣を横にはらった。
 せまってきた僧の首が三つ、いきなり宙に飛んだ。

「美しいシーアスを、こんな化け物どもに渡すものか!」
 バッカスは怒りに燃えた。
 体からカッ! と炎が噴き出したように見えた。
 いや、実際に、バッカスの体は炎に包まれた。
 人間の怒りの頂点が生み出す、自然発火現象だった。
 ゴウゴウと燃えあがるバッカス。
 その怒りの炎がグオオオっと幾筋もの炎の帯となって飛ぶ。
「ぎええええええええええええええっ!」
 つぎつぎと、僧たちが炎に焼かれ灰となってゆく。
「伯爵!!」
 ネコットが悲痛な叫びを上げた。
「わがシーアスに栄光あれ! スターシア姫に栄光あれ!」
 炎の中から伯爵のうめくような声がした。
「伯爵!!」
 ネコットがもう一度叫んだとき、バッタリと伯爵は倒れ、炎とともに、その肉体も消滅した。
 だが、炎を逃れた魔法教会の僧たちが、ネコットを囲む。
「くそっ!」
 ジリッ、ジリッ。
 囲みが縮まる。
「うおおおおおおおおおお!」
 ネコットは、死を覚悟した。
 と、その瞬間!
「この野郎!」
 廃屋の扉を破り、飛び込んできたのはカルビだった。
 そのうしろにはスターシアがいた。
「姫さま!!」
 ネコットの目に涙がわき上がった。
 なぜ、カルビとスターシアが一緒にいるのかなどということは、考えてもみなかった。ただ、スターシア姫が生きていた喜びに心が震えた。
「どけーーーーーーーっ!」
 カルビの体が躍った。
 ネコットがその言葉に反応して、ダッ! と壁際に下がる。
「バケモノどもめーっ!」
 カルビの鉄拳がうなる。
 早い!
 なんとも早い!
 僧たちをつぎつぎとぶっ倒した。
 スターシアの剣もうなる。
「これは……」
 廃屋の戸口に立っていたウキウキが、建物の中のゆがみを見つめた。
 そして、両手を空間にかかげ、
「闇の扉よ……静かに閉じよ!」
 と、呪文を唱えた。
 魔法教会の僧が出てきた空間のゆがみがみるみる閉じた。


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