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ICON 新二都物語カルビサーガ 第53話

「で、どうするのだ……?」
 魔法教会の暗い地下礼拝堂へアブラック三世がどなりこんできた。
 数人の司祭が王の前にひざまずく。
「この国をどうするつもりだ!?」
 アブラックはさらに声を上げた。
 まるで、自分の権威を確認するかのように、この魔法教会のなかでどなりちらした。
「国王の思いのままに……」
 と、司祭たちは形だけの儀礼的な口調で言った。
「そんなセリフを聞きに、わざわざ教会まで出向いたんじゃない!」
 アブラックはイラついた。
「あなたの言葉と行動が国をつくってゆきます」
「あなただと! それが王に向かって言う言葉か!」
「これは……失礼いたしました、国王さま」
 司祭たちには感情がなかった。
 いや、国王の権威など彼らは屁とも思っていなかった。
 現実にこの国を動かしているのは教会なのだ。
 だが、アブラック三世は、なんとか自分の権威をここで示さねばならなかった。
「わたしの娘に手をだすな! わたしの騎士団に手をだすな!」
 教会からスターシアを守りたかった。そして、教会が王宮騎士団を実験の材料にして、不死身の戦士をつくろうとしているのをやめさせたかった。
「いいかげんにして下さい……」
 突然、若い司祭が言った。
「なにっ!」
 アブラックの顔色が変わった。
「この国は魔法教会が動かします。あなたは飾りです」
 アブラックは、そこまで王の権威を軽く見られていたことがショックだった。
「あなたの立場は、魔法教会が守りますから、ご安心ください」
「……わかった」
 小さくつぶやいて、王は魔法教会を立ち去った。
 そして、自分の部屋にもどると、どっかりと椅子に体をあずけ目を閉じた。

(……スターシア、生きのびろよ)
 と、アブラックは心の中で願った。
 父としても王としても、なにもしてやれなかったが、だが、唯一、自分がこの国にいることで、いつか魔法教会を追放するチャンスになればいいと考えていた。
 美しい海に囲まれ、海と生きる人々の国シーアスは、いつしか富と欲望の国に変わりつつあった。
 魔法教会が、人々の欲望をつくり出したのだ。
「人間は自由なのだ。自由に生きよ! 豊かさを求めよ! 快楽を求めよ! 豊かさと快楽のためになら、なにをしてもゆるされるのだ!」
 と、魔法教会は説く。
 人々は、自分のためにのみ生きるようになっていた。
 他人を助けることは、愚かなことだ。
 常に、他人と比較してそして押しのけて生きるようになっていた。
 シーアスの国は腐りはじめていた。
「この国をなんとかできるのか……」
 と、アブラックはつぶやいた。
「いつか、この国を救う希望が現れることを願いたい」
 アブラック三世の目は、まだ死んでいなかった。


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