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「なんなのよーーーーーーーーーっ!」
魔法をつかったウキウキが、思わぬ展開にびっくりして叫んだ。
モクモクモクとまるでナラヤーナの樹を包むように黒煙が立ち昇った。
「こんなんじゃないもの! ウキウキの魔法は、こんなんじゃない!」
黒煙はあたりの光を吸収し、バチバチと火花をあげた。
「なにしたんだ! ウキウキ!」
カルビは、黒煙のなかで叫ぶ。
「スターシアの願いを叶える魔法を使ったんだもん!」
「スターシアは?」
「わかんないよ〜〜」
ウキウキは泣きそうな声を出した。
「スターシア! ス、スターシア!」
カルビは、横たわっているスターシアを見つけた。
その顔は、大理石のように無機質だった。
「スターシア!」
カルビは、スターシアを抱きしめた。
なんという冷たさだ。
「これ、違う……」
「なにが違うんだ!」
カルビがウキウキに強い口調で言った。
「スターシアは……人間じゃないよ……」
恐ろしいものを見るように、ウキウキがその場に硬直した。
「人間じゃないって、どーいうことだ!」
「わかんないけど……あたしの魔法が反射したんだ……反射して増幅して、無限に魔法が拡大してる……そんなことって……人間にはできないんだ……スターシアも魔女なんだ……」
「スターシアが魔女だって!?」
「うん。たぶん、あたし……同族に魔法を使っちゃったんだ……だから、こんなことになったんだ……」
黒煙は闇となって、あたりに拡大した。
まるで、世界をじわりじわりと闇が飲み込んでゆくようだった。
「止めろ! この魔法を止めろ!」
「だめなの! できないわ! これを止められるのは、スターシアよ!」
「シーアスの姫が、魔女だなんて……そんなこと信じられるかよ……」
カルビは抱きかかえているスターシアの顔を見つめた。
その一瞬の時間が、永遠のように感じられた。
「笑えーーーーーーーーーーーっ! スターシア!」
カルビがスターシアをきつく抱きしめた。
「ウキウキ! これが俺の願いだ! さあ! 契約するぞ! 早くしろ、スターシアをもとにもどせ!」
「…………」
「なにやってんだ! ウキウキ! 俺と契約したいんだろが!」
「わかったよ! 願い事を考えて、そして契約するって言うんだ!」
ウキウキの言葉を聞いて、カルビはスターシアのことを思った。
「……契約するぞ! スターシアを助けるためにな!」
「世界の悪魔と魔女の前に、契約をもって人間の願いを叶える……」
と、ウキウキが呪文を唱えようとしたとき、ナラヤーナの樹がザワッとゆれた。
そして、闇の中に樹がキラキラと光の胞子を放った。
「あれっ?」
ウキウキはおどろいた。
その光の胞子はウキウキの魔法で出したものじゃなかった。
ナラヤーナの樹がなにかに反応したのだ。
「あっ! ナラヤーナの樹……そうだ、思い出した……ナラヤーナの伝説……」
森に住む魔女が語り継ぐ〈ナラヤーナの伝説〉とは「憎しみをもったふたつの心が解けるときナラヤーナの奇跡が生まれるだろう」というものだった。
憎しみをもったふたり。まさに、カルビとスターシアに違いなかった。そして、いま、カルビは憎いシーアス国の姫のために、おのれの魂をかけて救いを求めた。
いま、ナラヤーナの奇跡が生まれようとしていた。
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