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タタッ、タタッ、タタッ!
(ナラヤーナの樹に行く前に、やらなけりゃならないことがあるわ!)
スターシアが思いつめた表情で、必死に馬を走らせる。
馬の方角はアブラック王の館。
(まさか! まさか! 私たちの企てが教会に知れていたなんて! なぜ? なぜ、王宮騎士団は決起しないの!?)
スターシアはこの反乱で、一気に魔法教会をたたき、その主導権を奪い取り、健全なシーアスの国をとりもどそうとした。
一部の騎士団が、決起すれば、すべての王宮騎士団が呼応するだろうと考えた。
だが、そのもくろみははずれ、なんと、王宮騎士団に決起がはばまれた。
(父上に直談判しよう!)
瞬間的にそう思った。どんなに、堕落した王であっても、王なのだから。そして父として娘を助けるだろうと考えた。父、アブラック三世は嫌いだが、いまは、その方法でしか、決起した仲間を救えなかった。
「はっ!」
スターシアは馬にムチを入れた。
スターシアが加担していると知って、アブラックはがっくりと落胆し、
「そんなことで、魔法教会が倒れるものか……」
と、ため息をついた。
「王さま、ただいま、門前にスターシア姫がお越しです。火急のご用ということで、直に王さまにお会いしたいとのこと」
「会えぬと伝えよ……」
「……」
「なんだ。その顔は……わしが、薄情な父だと思っているのか!?」
「い、いえ……」
執事がうろたえた。
「いいや、そう顔に書いてある。だが、おまえたちには、このわしの気持ちなどわからん! さあ、スターシアを追い返せ!」
「いま、スターシアさまを救えるのは、王さましかおりません……」
執事が唇をふるわせて言った。
「わしがスターシアを救えば、わしを誰が救ってくれるのだ? えっ!? いったい、魔法教会からわしを誰が救ってくれると言うのだ!?」
「……失礼いたしました」
と、執事は頭を下げて部屋を出た。
「どいつもこいつもバカばかりだ……」
アブラックはかたわらの椅子にどっかりと倒れ込むように座った。
「わしがここに王として座っているかぎり、代々続いた王家は守られているのだ。なにもしないことで、わしは王家の血を守っている……そして、そのことがスターシアの命も守ることになるのだ……」
自分に言い聞かせるように、アブラック三世はつぶやいた。
門の前に馬を止めてスターシアが執事と向き合っていた。
「そう……会わないって……」
「はい……」
執事は消え入りそうな声で答えた。
「父上らしいわね。わたしが反乱軍になったので、急に怖くなったのね」
「……」
「わたし、父上の子じゃないから」
「スターシアさま!」
執事はあたりをうかがった。
「いいの。知ってるから。じゃあ、父上によろしく。もう二度と会えないかもしれないから。あなたも、体には気をつけてね」
と、スターシアは馬にまたがり、ムチを入れた。
「ス、スターシアさま……」
執事の目からポロポロと涙がこぼれ落ちた。
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