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教会を占拠しようとしたバッカス伯爵たちの前に、立ちはだかったのは、怪物だけではなかった。
教会の作った怪物は、時間稼ぎにすぎなかった。
「なに!? 戦争騎士団が教会を包囲しただと!?」
伯爵の体から力が急速に抜けていった。
「バッカス伯爵! 教会に対する攻撃は王位への反逆とみなします!」
教会の外から、声がかかった。
「そうか反逆か……はははははは」
伯爵はむなしく笑った。
「抵抗なされば、我々は攻撃させていただきます」
という声につづいて、ばらばらと黒い甲冑をつけた戦争騎士団が教会に入ってきた。
「もはや、これまでか……」
伯爵は思った。
そのとき、
「待たれよ!」
凛とした声は、スターシア姫。
ザッと教会の全員が、入り口を見た。
純白のロングスカートに銀の胸当てをつけた姫が、さっそうと入ってきた。
「この者たちは、私の命によって行動している! 教会に不信あり! それを調査している。今日は役目が終わったので、これで引き上げるが、異存あれば私が聞こう!」
スターシアがぐるりと戦争騎士団を見渡した。
戦争騎士団が硬直した。
いかに教会の命令といっても、さすがにシーアスの姫君に剣を向けるわけにはいかなかった。
「異存ないな! では、引き上げる!」
と、スターシアが言って、くるりと入り口に向かって歩きはじめた。
「みな、引き上げだ」
伯爵の言葉に、残っていた数名の騎士たちが連なった。
「町外れに、馬が用意してあります。それで逃げて下さい」
スターシアが伯爵の耳元にささやいた。すでに一刻の猶予もならなかった。
教会はいつのまにか、戦争騎士団までも支配下におさめていたのだった。
「わかりました。姫さまもご一緒に……すでにこの国は危険です」
「カルナックが王宮で、残りの王宮騎士団を説得しています。わたしはそれらと一緒に」「どこへ?」
「マウンティアへ」
「わかりました」
バッカス伯爵はこのとき、スターシア姫のために生きるのも騎士としての道だと思った。真に守るべきものを見つけたとき、騎士は剣をもって戦えるのだと。
教会の前で、スターシアは馬にまたがると、
「さあ! 急いで!」
と、バッカスたちをうながした。
「姫さまも必ずご無事で!」
「私は大丈夫よ!」
と、スターシアは馬を走らせ、再び王宮にもどって行った。
戻り道、スターシアはくやしさに何度も唇を噛みしめた。
(もうすこし私が周囲に心配りしていれば、教会の動きを読みとれたものを)
スターシアは、自分がバッカス伯爵たちを反逆者にしてしまったことを後悔した。
だが、このとき、すでに事態はスターシアが思うより、最悪のシナリオへところがっていたのだ。
夜の闇に、得体の知れぬ悪徳の匂いがまじっていた。
城の城壁にゆれるたいまつの火も、今日は妙に邪悪な光を放って見えた。
スターシアが城に到着したとき、カルナックは剣を抜き、王宮騎士団と対面していた。
「王宮騎士団は王を守る者だ! その王が動いておらぬ! 王は教会に不満を持っておらぬのだぞ!」
騎士団の中のひとりが言った。
「教会をつぶすことが、王を守ることだ!」
カルナックが苦しまぎれに叫んだ。
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