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ICON 新二都物語カルビサーガ 第43話

 教会を占拠しようとしたバッカス伯爵たちの前に、立ちはだかったのは、怪物だけではなかった。
 教会の作った怪物は、時間稼ぎにすぎなかった。
「なに!? 戦争騎士団が教会を包囲しただと!?」
 伯爵の体から力が急速に抜けていった。
「バッカス伯爵! 教会に対する攻撃は王位への反逆とみなします!」
 教会の外から、声がかかった。
「そうか反逆か……はははははは」
 伯爵はむなしく笑った。
「抵抗なされば、我々は攻撃させていただきます」
 という声につづいて、ばらばらと黒い甲冑をつけた戦争騎士団が教会に入ってきた。
「もはや、これまでか……」
 伯爵は思った。
 そのとき、
「待たれよ!」
 凛とした声は、スターシア姫。
 ザッと教会の全員が、入り口を見た。
 純白のロングスカートに銀の胸当てをつけた姫が、さっそうと入ってきた。
「この者たちは、私の命によって行動している! 教会に不信あり! それを調査している。今日は役目が終わったので、これで引き上げるが、異存あれば私が聞こう!」
 スターシアがぐるりと戦争騎士団を見渡した。
 戦争騎士団が硬直した。
 いかに教会の命令といっても、さすがにシーアスの姫君に剣を向けるわけにはいかなかった。
「異存ないな! では、引き上げる!」
 と、スターシアが言って、くるりと入り口に向かって歩きはじめた。
「みな、引き上げだ」
 伯爵の言葉に、残っていた数名の騎士たちが連なった。
「町外れに、馬が用意してあります。それで逃げて下さい」
 スターシアが伯爵の耳元にささやいた。すでに一刻の猶予もならなかった。
 教会はいつのまにか、戦争騎士団までも支配下におさめていたのだった。
「わかりました。姫さまもご一緒に……すでにこの国は危険です」
「カルナックが王宮で、残りの王宮騎士団を説得しています。わたしはそれらと一緒に」「どこへ?」
「マウンティアへ」
「わかりました」
 バッカス伯爵はこのとき、スターシア姫のために生きるのも騎士としての道だと思った。真に守るべきものを見つけたとき、騎士は剣をもって戦えるのだと。
 教会の前で、スターシアは馬にまたがると、
「さあ! 急いで!」
 と、バッカスたちをうながした。
「姫さまも必ずご無事で!」
「私は大丈夫よ!」
 と、スターシアは馬を走らせ、再び王宮にもどって行った。
 戻り道、スターシアはくやしさに何度も唇を噛みしめた。
(もうすこし私が周囲に心配りしていれば、教会の動きを読みとれたものを)
 スターシアは、自分がバッカス伯爵たちを反逆者にしてしまったことを後悔した。
 だが、このとき、すでに事態はスターシアが思うより、最悪のシナリオへところがっていたのだ。
 夜の闇に、得体の知れぬ悪徳の匂いがまじっていた。
 城の城壁にゆれるたいまつの火も、今日は妙に邪悪な光を放って見えた。
 スターシアが城に到着したとき、カルナックは剣を抜き、王宮騎士団と対面していた。
「王宮騎士団は王を守る者だ! その王が動いておらぬ! 王は教会に不満を持っておらぬのだぞ!」
 騎士団の中のひとりが言った。
「教会をつぶすことが、王を守ることだ!」
 カルナックが苦しまぎれに叫んだ。


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