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「王宮騎士団が教会に攻め入ったと!」
アブラック三世は寝室で飛び起きた。
その知らせを持ってきたのは、教会の老僧であった。
「で……」
アブラックは相手の言葉をさそった。
「バッカス伯爵の反乱でございます」
老僧は落ちついていた。
「反乱か……」
と、アブラックはつぶやいた。
(しまった……バッカスめ早まったことを……)
アブラックは心の中で舌打ちをした。早くにグリフォン男爵と会わせておけばよかったと後悔した。教会への反乱は、もっと慎重にやらなければならなかった。
「王さま……」
かたわらに寝ていたククリは心配そうにのぞき込んだ。
「安心しろ。王宮騎士団は王を守る者たちだ。わたしは斬れぬ」
と、ククリの肩にやさしく手をかけた。
「はい。そして、王が認めた教会への攻撃は、王に対する反逆でございます」
老僧の言葉には含みがあった。
「わしは教会を裏切らぬぞ……」
教会に気どられないように、アブラックは心を隠した。
「わかっております」
「そうか……」
アブラック三世は老僧を見つめた。
バッカス伯爵率いる王宮騎士団に反逆の烙印を押すか、それとも王位から教会の呪縛を解いた名誉をあたえるか、アブラックは一瞬ではあるが迷った。
「彼らを名誉ある騎士団にすることは不可能です」
さきまわりするように老僧は言った。
「もちろんだ」
と、アブラックは強く言った。
「教会との契約をお忘れなく。教会があなたさまを王にしたのですから」
「わかっている!」
アブラックは老僧の言葉を制した。
教会との契約。
アブラックはそのことを考えた。
あの日、アブラックは、教会に出向き「われを王に」と願った。
それから一年。
アブラックの二人の兄が相次いで死んだ。
そして、簡単にアブラックは王となった。
そのかわり、アブラックは教会に対して王宮の不可侵を約束させられた。
教会は、その時点で、国家そのものとなってしまった。
「で、どうするつもりだ?」
アブラックは、バッカス伯爵たちのことを聞いた。
「反逆者として葬っていただきます」
老僧が冷たく言った。
「相手は王宮騎士団だぞ」
アブラックはバッカス伯爵の人気を知っていた。
「ふふ……」
老僧は不気味に笑った。
「彼らの大義は……」
「どう対処するのか? とお聞きかな……さて、いかがいたしましょうか」
老僧は楽しんでいるようだった。
「もし、すべての王宮騎士団が立ったら……教会は勝てるのか?」
アブラック三世はさぐるように老僧を見た。
「教会は、何者からの干渉も受けません。不可侵の存在であります」
「現実的な問題だ!」
「力には力でございます。他の兵を動かします」
「なに!?」
王宮騎士団以外の兵といえば、それは陸・海の戦争騎士団のことだ。
大きな戦争用に訓練された軍隊が戦争騎士団であった。
それは、王宮騎士団の下に配置された陸・海の軍隊だ。
「まさか……あれを教会が……」
アブラックは、愕然とした。
「はい。すでに手はずは……」
老僧が静かに笑った。
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