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ICON 新二都物語カルビサーガ 第38話

「ちっ! 逃がしただと!」
 魔法教会地下の暗い祭壇の前でフルブ司祭がはき捨てた。
「はい。三人の王宮騎士は死亡いたしました」
 フルブ司祭の足下にひざまずいた若い僧が答えた。
「王宮騎士に不完全な合成魔法を使ったのはまずかったな……」
「しかし、強い素材でないと……」
「で、効果時間は一日か」
「はあ」
「完全な合成魔法はわれらの悲願じゃ」
「はい。そのためには、あの少年が……」
「マナをもっているかな?」
 フルブ司祭が言ったとき、
「うぎゃあああああああああ!」
 という叫び声が地下の壁に反響した。
「魔女が邪魔をしたと?」
「そう報告がありました」
「少年は、あの虎と逃げたのか?」
「空に」
「空か……」
 フルブ司祭は眉にしわを寄せた。
「空を飛ばせることはできんのか?」
「人間に死霊を合体させる魔法では空を飛ばせません」
 若い僧の名はメディセン。魔法開発博士である。
「ぐああああああ!」
 と、また叫び声が響いた。
 メディセンが振り返る。
「実験のつづきがございますので」
「わかった」
 司祭が祭壇横に下がると、メディセンは立ち上がり奥の部屋に入った。
 その部屋は広かった。
 そして全体がモノクロームに見えた。
 かび臭い書物の匂いに、香草やエーテルの匂いなどが鼻をつく。
 壁際には、人間が入れるくらいの試験管がずらりと並んでいる。
 試験管にはコイル状のコードが巻きついていた。
 巨大な電源がある。
 部屋全体が、奇妙な実験室だった。
 部屋がモノトーンに見えたのは、天井に吊るしてある電球が黒く塗られているからだった。
 試験管のなかのエーテルは、ゴボゴボと沸騰していた。
 そのなかで、人間らしいものが動いていた。
 ぐるりと動いたとき、それが空挺隊の荒くれ者のルースだとわかった。
「こいつは素材がいい」
 ぶつぶつと言いながらメディセンは作業に入った。
 彼が行っているのは〈合成魔法〉の実験だった。
 特に、人間にまったく違う能力をつけ加える魔法の開発だ。
「マウンティアにある〈マナ〉を見つければ、もっと早く開発が進むはず……」
 実は、魔法教会がシーアスをあやつり、マウンティアを攻めた本当の理由は、山の国の秘宝〈マナ〉物質にあった。
 それは万能の魔法を生み出すものだと言われていた。
 山の少年カルビが、山の神ナムルとともにいるのは、〈マナ〉をもっているのではないかと、魔法教会はにらんでいた。
 だから、カルビをとらえ、新しい合成魔法を完成させたかった。


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