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「ちっ! 逃がしただと!」
魔法教会地下の暗い祭壇の前でフルブ司祭がはき捨てた。
「はい。三人の王宮騎士は死亡いたしました」
フルブ司祭の足下にひざまずいた若い僧が答えた。
「王宮騎士に不完全な合成魔法を使ったのはまずかったな……」
「しかし、強い素材でないと……」
「で、効果時間は一日か」
「はあ」
「完全な合成魔法はわれらの悲願じゃ」
「はい。そのためには、あの少年が……」
「マナをもっているかな?」
フルブ司祭が言ったとき、
「うぎゃあああああああああ!」
という叫び声が地下の壁に反響した。
「魔女が邪魔をしたと?」
「そう報告がありました」
「少年は、あの虎と逃げたのか?」
「空に」
「空か……」
フルブ司祭は眉にしわを寄せた。
「空を飛ばせることはできんのか?」
「人間に死霊を合体させる魔法では空を飛ばせません」
若い僧の名はメディセン。魔法開発博士である。
「ぐああああああ!」
と、また叫び声が響いた。
メディセンが振り返る。
「実験のつづきがございますので」
「わかった」
司祭が祭壇横に下がると、メディセンは立ち上がり奥の部屋に入った。
その部屋は広かった。
そして全体がモノクロームに見えた。
かび臭い書物の匂いに、香草やエーテルの匂いなどが鼻をつく。
壁際には、人間が入れるくらいの試験管がずらりと並んでいる。
試験管にはコイル状のコードが巻きついていた。
巨大な電源がある。
部屋全体が、奇妙な実験室だった。
部屋がモノトーンに見えたのは、天井に吊るしてある電球が黒く塗られているからだった。
試験管のなかのエーテルは、ゴボゴボと沸騰していた。
そのなかで、人間らしいものが動いていた。
ぐるりと動いたとき、それが空挺隊の荒くれ者のルースだとわかった。
「こいつは素材がいい」
ぶつぶつと言いながらメディセンは作業に入った。
彼が行っているのは〈合成魔法〉の実験だった。
特に、人間にまったく違う能力をつけ加える魔法の開発だ。
「マウンティアにある〈マナ〉を見つければ、もっと早く開発が進むはず……」
実は、魔法教会がシーアスをあやつり、マウンティアを攻めた本当の理由は、山の国の秘宝〈マナ〉物質にあった。
それは万能の魔法を生み出すものだと言われていた。
山の少年カルビが、山の神ナムルとともにいるのは、〈マナ〉をもっているのではないかと、魔法教会はにらんでいた。
だから、カルビをとらえ、新しい合成魔法を完成させたかった。
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