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それは、あきらかに、感情を殺した言い方だった。
「そうか」
アブラックの返事はそれだけだった。
握った手が小刻みにふるえた。
スターシアは爆発するような怒りをなんとか押さえた。
「それだけですか……」
かろうじて、スターシアは言った。
「それだけだ」
「なぜ?」
「どういうことだ? わたしにどんな答えを期待した?」
「…………」
スターシアは唇を噛んでうつむいた。
「王宮騎士が三人死んだ……それだけのことで、わたしの時間をムダにしないでもらいたい」
「わかりました! 行きましょうカルナック!」
と、スターシアが顔を上げて王の部屋を出て行く。
カルナックも一礼して、その後ろにつづいた。
「お似合いのふたりだ……気の強い冷血な王女と甘ったるい忠犬の王宮騎士か」
アブラックは出て行くふたりの背中に下品な言葉を投げた。
わかっていた。
自分がどうにかできるのなら、すぐにも、調査をした。
だが、どうせ魔法教会の仕業に決まっていることだ。
うかつに首を突っ込めば、自分の立場があぶなかった。
「ダメ王でいることが、おまえたちを守ることにもなるのだ。いつかわかる……」
アブラックはつぶやき、
「さあ、つづきだ!」
と、ククリを抱きしめた。
だが、ククリは、大きなドアの向こうに去った、王宮騎士のカルナックに心を奪われていた。
「どうした?」
「い、いえ……」
やっと、ククリは自分の立場に気がついた。
ここで、王以外の男に気持ちが移ったことに気づかれたら、ここから追放されるだろう。
そうすれば、せっかく上りつめた階段をころげ落ちねばならなかった。
汚く狭い長屋でボロをまとい腐った魚を食べる生活に逆戻りなどしたくなかった。
「王さま……」
思いきり甘い声で、ククリはアブラックにしがみついた。
自分の気持ちの底が見破られないかという不安があった。
体がふるえた。
「そうか、かわいいな。こわかったのか……あの子はわしの娘だが、どうも威圧的で冷たいところがあるからな……」
と、アブラック三世が笑う。
「…………」
ククリはこころのなかで、ほっとした。
この王だけが、いまのところ自分を救える存在なのだ。と、固く自分に言い聞かせた。
中年オヤジの遊び道具にされるのはイヤだけど、もっとイヤなことが世の中には多すぎる。
そういうことと比べてさえみれば、オヤジの道具になることぐらい、気持ちの切り替えだけのことだった。
これは商売だと割り切って、王を喜ばせようと思った。
「さあ、ちょっと寒くなってきたから、中に入ろう」
「はい」
できるかぎりの優しい声で、王の耳元にささやいた。
だが、ククリのこころには、さきほどのカルナックの姿が焼き付いていた。
こころが焦げるほどに。
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