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「どひゃ〜〜! ウキウキが、でっかくなった!」
カルビは、喜んだ。からだの中からわき上がる高揚感があった。それは、野生の暴力性なのかもしれない。〈強い〉ということが、自分の存在価値になっているのかもしれない。
「王宮騎士とは、黙って見てられねえな!」
ナムルもニヤリと笑いながら一歩前に出た。この山の神は、圧倒的に暴れるのが好きだ。
「やっちゃえ!」
カルビは言いながら、騎士のひとりに躍りかかる。
「おっしゃ!」
ナムルもつづく。
「ふざけるなよ!」
と、騎士が剣を振る。良く訓練されたムダのない動きだ。
だが、カルビの動きは、さらに早い。
ビュッ! と風のように前進して、ほぼ直角に曲がり、タンッと空中に跳んだ。
その動きは、山の小動物。そう、むささびのようである。
人間の目には、消えたという風にしか思えないほど、早い動きだった。
バキッ! 空中からの一発目のパンチが、騎士の顔面をとらえた。
衝撃で、騎士がグラッとよろける。
「ちっ!」
着地したカルビが舌打ちした。
騎士がすっぽりとかぶっている兜が意外に防御力が高かった。
「がおおおおおおおおお!」
魔物化したウキウキは騎士をつかむとたやすくブン投げた。
ナムルは、騎士の突き出す剣をバキッとへし折った。
「王宮騎士団の名誉にかけて、こんなヤツらに……」
と、カルビの前の騎士が言った。
「ムダだと思うよ」
カルビが挑発した。
「グロンブロウ・ガルベスタル・ルラン……」
騎士が突然口の中で呪文を唱えた。
そのとたん、騎士の体が、ぬらぬらとした赤黒いぶよぶよの死霊と化した。
なんということだ!
魔法教会の呪いのかかった、騎士団だった。
「な、なんだこりゃ!」
ナムルは、目をむいた。
魔法教会の力は、王宮騎士団のなかにまで入り込んでいた。
海の国シーアスと山の国マウンティアは長いこと共存していた。それが、突然シーアスによってマウンティアは攻め滅ぼされた。
その理由のひとつが、いま、カルビにはわかった。
自然とともに暮らすマウンティアは、魔法教会を邪教だと思っていた。
その邪教が騎士団をあやつりマウンティアを滅ぼしたのだとカルビは思った。
カルビには、魔法教会の高笑いが聞こえてくるようだった。
生まれ住んだ山々が、シーアスの兵によって焼かれた光景が、いまもカルビの目の奥に焼き付いていた。
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