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ICON 新二都物語カルビサーガ 第31話

「がるるるるるるる!」
 魔物に変身したウキウキの赤い目の底には敵意があった。
「冗談じゃねえぞ……かわいい魔女が化け物になっちゃった」
 カルビが振り返ったとたん、
「びょえええええええええええ!」
 と、ナムルが逃げる体勢をつくったので、
「おい!」
 とカルビはナムルのしっぽをつかまえて引きとめた。
「や、やめろ……魔女にゃ、俺の術が通じねえんだよ」
 いきなり弱気なナムルだった。
「がおおおおおおお!」
 魔物化したウキウキは、真っ赤な口を耳までグウワッと開けて吠えた。
 その声は、あやかしの森中に響きわたった。
 だが、カルビの体には、カッとするような戦闘意欲が燃え上がらなかった。
 魔物の正体がかわいい魔女ウキウキだからだろうか。
 言い忘れたが、魔物に変身したウキウキは、なんと三メートルはあろうかという大きさになっている。
 それでも、カルビは男の子として、女の子に暴力で立ち向かうことに抵抗があった。
 しかし! この場は、そんなことを考えているヒマなどなかった。
 案の定、カルビは魔物ウキウキにつかまった。
「がるるるるるるるるるるるる!」
 魔物ウキウキがカルビを握った。
「やめろーーっ!」
 カルビが叫ぶ。
 バキバキバキ!
 木をブッ倒しながら凶暴にカルビをふりまわす。
「うわああああ!」
 カルビは失神しそうになった。
「あああ……」
 ナムルは後ずさりをする。そして、ダッと逃げた。
「がおおおおおおお!」
 魔物ウキウキがナムルを追っかけながら、そこらじゅうの木を引っこ抜きぶんなげてきた。
「な、なんとかしろ! ナムル!」
 と、カルビが叫ぶ。
「お、おめえがなんとかしろ! カルビ!」
「わかりにくいヤツだな、おまえは……」
「なにがじゃ!」
「強いなら、あくまで強い! ってのが常識だろ! なんで、魔女を怖がるんだよ〜〜!」
 カルビはウキウキに握られている。なんとか、その手を振りほどこうともがいた。
「うるせえ! 何でも食えるけど、ピーマンだけはキライ! ジンマシンがでるほどキライってことだ!」
 そんなことを話している場合ではなかった。
 状況は、緊迫していた。
 後方に迫る魔物ウキウキは、さらに凶暴になっていた。
「さっさと飛べ! それでこいつにぶち当たれ!」
「だ、だめなんだ! この魔女の森のなかじゃ、俺の力が使えないんだ!」
「どーして!」
「しらねえよ!」
 そのとき、魔物ウキウキがカルビを振りまわした。
「うぐっ!」
 地面にたたきつけられ、カルビが腹筋に力を入れて苦痛に耐える。
「ば、ばか! ええい、こんちくしょう!」
 ナムルがもうどうにでもなれという気持ちで振り返り、
「くらえっ!」
 と、いきなり口から火を吹いた。
 だが、火は、チョロリとしか出ない。
 やはり、魔女の森ではナムルの力は全開しなかった。
「ぐおおおおおおおお!」
 魔物ウキウキが、おかえしとばかりに口から火を吹いた。
「ひっ!」
 ナムルがあせる。
「がおおおおおおおお!」
 今度は、魔物ウキウキが口から吸い込んだ炎を吐き出した。
「うあちっちっ!」
 炎をあびたナムルが飛び上がった。
 そのとき、カルビは、魔物ウキウキの胸にある赤いボタンに気がついた。
「な、なんだ?」
 カルビは自由になる左手をのばして、そのボタンを押した。
 キュルルルルルルルル!
 へんてこな音をたてて、魔物ウキウキは、ふたたびかわいい魔女にもどった。
 ドタッ!
 と、カルビが地面に落ちる。
「いやだ〜〜〜! 変身解除ボタン押しちゃった!」
 ウキウキが叫んだ。
「変身解除ボタン……」
 カルビがあきれる。
「ざけんな! おどかしやがって……」
 ナムルが、ホッとしたようにため息をもらした。
「てめえ、食い殺してやろうか!」
 と、いきなり態度の大きくなったナムルがウキウキにせまる。
「ひい……」
 とウキウキが首をすくめた。
「おいおい! 待てよ!」
 カルビが間に入った。
「止めるんじゃねえ!」
 ナムルがキレかかっていた。


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