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「おい! ナムル! あいさつしろよ」
と、カルビがからかった。
おっそろしい虎のナムルを、目の前の女の子が恐がるのならわかるが、どう考えても、山の神であるナムルがこんなかわいらしい女の子を恐がっている現実が、なんだか、おかしかった。
「お、おまえにはわかんねえだ! そ、そいつは魔女だぞ! きっと、子どもの姿に化けているんだ!」
「化けてたっていいじゃないか。ナムルのほうがよっぽどおっかないとおもうけど」
「うるさい! 魔女の怖さを知らないからだ!」
「あたしは魔女だけど、怖くないよ」
話を聞いていたウキウキがにっこりと笑った。
「ほ〜〜ら。かわいい女の子じゃないか」
「ありがとう。お兄ちゃん! でもね、他の魔女は怖いんだよ」
無邪気にウキウキが言った。
「えっ!?」
カルビが聞き返した。
「ほ、ほらみろ!」
ナムルがビビる。
「魔女はね、人間の役にたつんだよ。でもね、契約しなくちゃダメなの。人間と契約した魔女は一人前。あたし、まだ、一人も契約取ってないんだ。だから、お願い! あたしと契約して! ねっ!」
「な、なんだよ。いきなり契約って?」
カルビが一、二歩うしろにさがる。
「なんでもいいのよ! お願い事があるでしょ! たとえば、あいつを殺してくれとか……いっぱいお金がほしいとか……」
ウキウキは真剣な顔でカルビにせまる。
「そんな願いごとなんてない!」
「ウソだあ! あるよ。人間なら、欲望があるもの!」
「欲望……?」
カルビは、ちょっと考えてしまった。
「やめろ、カルビ。魔女と契約したら、たいへんなことになるんだぞ……」
ナムルがカルビの耳元にささやいた。
「ちょっと! そこの虎さん! 契約の邪魔しないでよ!」
「ギクッ!」
ウキウキに怒られて、ナムルが体を縮めた。
「あんたは山の神でしょ……」
「ギクッ! ギクッ!」
「えらそうに、おおきな翼をもってるけど……それって魔女にもらったものじゃない?」
「ギクッ! ギクッ! ギクッ!」
「とべないよーにしちゃうよ」
「いや……おれは、なんて言うか……こいつが友達だもんで……あっ、そうね。契約は本人の自由だな……」
ナムルがあとずさった。こんなナムルの弱気な姿を見るのは初めてだ。
「ちょっと、まった!」
カルビが言った。
「あっ! なーに? 契約してくれるの?」
「その契約ってなんだ?」
「だからさ、あなたのお願いをあたしがかなえたら、あなたの魂をもらえるの」
「魂?」
「そう」
ウキウキがニコニコとしていた。
「魂を取るっての?」
「そう!」
「死んじゃうじゃないか!」
「死なないよ。ただ、人間じゃなくなるだけ」
「な、なに?」
「豚とか、犬とか、虫になるんだよ」
「っざけんな!」
カルビが大声を上げた。
「…………グスン」
突然、ウキウキの大きな目が涙でうるむ。
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