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アブラック王は、破ったページを手の中で丸めた。
あの好色なダジャレ王と言われるような間抜けな顔はどこにもなかった。
王は、クリスタルの灰皿のなかに丸めた紙を落とすと、マッチを擦って火をつけた。
赤く紙が燃え上がり、一瞬にして、紙は黒く変色し灰となった。
「さあ、わたしの文字たちよ舞い上がれ」
と、唱えた。
文字はヒュンと灰皿から浮き上がり空間でフウッと消えた。
これは〈文字飛ばし〉だ。
秘密の伝達に使われる魔法の一種。
だがなぜアブラック王が魔法を使えるのか?
どうもこの王はただ者ではないようだ。
「うんん……」
そのとき、ククリが目をこすりながらソファーから上体を起こした。
「起きたのか、よく寝ていたね」
アブラック王が、声をかけた。
もう、いつもの好色な顔にもどっていた。
「さあ、寝よう」
「王さま……いつになったら、この国をククリにくれるのですか?」
「遠くない未来だ」
アブラックはそう言いながら、ククリのスカートをめくり純白のパンツをのぞいた。
「ダメ! パンツ見るのは反則! この国をくれたら!」
「おいおい、そりゃないぜ」
「ダメダメ」
「こらこら」
逃げるククリをアブラックは追いかけまわした。
そして、ここは、城から少し離れたところにある古い屋敷。
主はグリフォン男爵。
古くから王家に仕え、いまは王宮騎士団の名誉団長という閑職にあった。
そのグリフォン男爵の部屋にフッと青い火が灯った。
「うん?」
読書中のグリフォンは、顔を上げた。
すると、その目の前で、青い火はくるくると回り、空間にほんの短い間、文字を映し出した。
アブラック王の飛ばした文字だ。
「陛下……」
と、グリフォンは文字を読むと、持っていた本を落とした。
「このわたしに、魔法教会と戦えと……」
取り乱していた。
グリフォンは己の剣のみに生きてきた人間だった。
年もすでに六〇歳になろうとしていた。
できるなら、静かに、名剣士としての栄光に包まれて人生を終えようと思っていた。
王家と教会の対立に加われば、自分が泥まみれとなることはわかっている。
「わたしは……剣で何を守ればいいか知っているつもりです」
グリフォンの顔にはいくばくかの迷いが浮かんでいた。
しかし、王家に仕える者として王の命令には逆らえなかった。
「あなたと、王家のためなら、民衆の怒りを買おうとも、必ずや魔法教会を斬ってみせましょう」
グリフォンは、心の中で決意をした。
だが、すぐに行動するような愚かなマネはしなかった。
事を起こすには、入念な計画と準備が必要なことを知っていた。
「うむ。これからは、わが家でお茶会を開こう。そして、味方になる人間を増やしていこう」
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