Top 見る・読む 参加する ご案内
ICON 新二都物語カルビサーガ 第22話

 カルナックは姫の部屋を出ると、その足で城を出て広場に向かった。
 無性に酒が飲みたくなった。
 早い時間なので、酒場には、まだ人がいなかった。
「あいつ……いい目をしているな……」
 と、カルナックがタンポポ酒をあおった。
「そんないい女でしたか?」
 カルナックが色男だということを知っている店の主人が、暇つぶしにたずねた。
「ああ」
「紹介してくださいよ」
「おまえが会える女じゃない。もう一杯だ」
「こりゃ、まいった。はははは」
「ふるいつきたくなるいい目だったさ……」
 そう言って、酒をあおると、酒代をテーブルに置いてカルナックは出口に向かった。
「また来てくださいまし」
 酒場を出て行くカルナックに店主は声をかけた。
「ちぇっ! きどってやがら。ったく。王宮騎士団の色男野郎め」
 と、はき捨てるように言った。
 酒場を出たカルナックは脳裏にやきついたスターシアの目を振りはらうように町の中を歩きまわった。
「ねえ、あんた、花はいかが?」
 天幕をかけた店先から、四〇すぎの太った女が声をかけてきた。
「俺か?」
 カルナックは立ち止まった。
「そうだよ、あんただ。そんなに思い詰めちゃいけないね。そんなときは、彼女に花でも贈ることさ」
「おい。俺が、女のことで思い詰めているだって?」
「そうだよ。顔に書いてあるじゃないか」
「ばか言え……」
「当たりだろう」
「はずれちゃいない。だが、思い詰めてるわけじゃない」
「まあいいや。花買っておくれよ」
「花をとどけてくれるか?」
「いっぱい買ってくれればね」
「この店の全部だ」
「まあ、あんたにすごくいいことがあるよ! きっと!」
「じゃあ、これを城の姫さまに」
「はははは。あんた、冗談がうまいね」
「冗談じゃない。王宮騎士団カルナックからの見舞いだと言ってくれ」
「ええっ! 本当かい! そりゃすごい。よしわかった。でも、代金は先払いだよ」
「これでいいか?」
「あら! こんないっぱい! あたしゃなんて運がいいんだろうね! この花を全部、すぐ届けるからね!」
 女は店じまいをはじめた。
 カルナックは、女の声を背中で聞きながら、魔法教会へと足を進めた。
 そのとき、
「がんばるんだよ! 大魔女のアスリータのタトゥーを受けたカルナック!」
 と、声がした。
「なに〓」
 ギクッとして、振り返るカルナック。
 契約のタトゥーのことは、誰も知らないことだった。
 だが、なんということだ、あの花売りの女は忽然と消えていた。
 まるで、白日夢を見ているかのように。
「魔女か……」
 カルナックは王女救出にあたって、魔女の助言を求めた。
「報酬を忘れるなよという警告のつもりか」
 カルナックは笑いながら、歩き出した。


前へ 新二都物語カルビサーガTOPへ戻る 次へ 
PageTopへサイトマップへ
著作権についての考え方