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カルナックは姫の部屋を出ると、その足で城を出て広場に向かった。
無性に酒が飲みたくなった。
早い時間なので、酒場には、まだ人がいなかった。
「あいつ……いい目をしているな……」
と、カルナックがタンポポ酒をあおった。
「そんないい女でしたか?」
カルナックが色男だということを知っている店の主人が、暇つぶしにたずねた。
「ああ」
「紹介してくださいよ」
「おまえが会える女じゃない。もう一杯だ」
「こりゃ、まいった。はははは」
「ふるいつきたくなるいい目だったさ……」
そう言って、酒をあおると、酒代をテーブルに置いてカルナックは出口に向かった。
「また来てくださいまし」
酒場を出て行くカルナックに店主は声をかけた。
「ちぇっ! きどってやがら。ったく。王宮騎士団の色男野郎め」
と、はき捨てるように言った。
酒場を出たカルナックは脳裏にやきついたスターシアの目を振りはらうように町の中を歩きまわった。
「ねえ、あんた、花はいかが?」
天幕をかけた店先から、四〇すぎの太った女が声をかけてきた。
「俺か?」
カルナックは立ち止まった。
「そうだよ、あんただ。そんなに思い詰めちゃいけないね。そんなときは、彼女に花でも贈ることさ」
「おい。俺が、女のことで思い詰めているだって?」
「そうだよ。顔に書いてあるじゃないか」
「ばか言え……」
「当たりだろう」
「はずれちゃいない。だが、思い詰めてるわけじゃない」
「まあいいや。花買っておくれよ」
「花をとどけてくれるか?」
「いっぱい買ってくれればね」
「この店の全部だ」
「まあ、あんたにすごくいいことがあるよ! きっと!」
「じゃあ、これを城の姫さまに」
「はははは。あんた、冗談がうまいね」
「冗談じゃない。王宮騎士団カルナックからの見舞いだと言ってくれ」
「ええっ! 本当かい! そりゃすごい。よしわかった。でも、代金は先払いだよ」
「これでいいか?」
「あら! こんないっぱい! あたしゃなんて運がいいんだろうね! この花を全部、すぐ届けるからね!」
女は店じまいをはじめた。
カルナックは、女の声を背中で聞きながら、魔法教会へと足を進めた。
そのとき、
「がんばるんだよ! 大魔女のアスリータのタトゥーを受けたカルナック!」
と、声がした。
「なに〓」
ギクッとして、振り返るカルナック。
契約のタトゥーのことは、誰も知らないことだった。
だが、なんということだ、あの花売りの女は忽然と消えていた。
まるで、白日夢を見ているかのように。
「魔女か……」
カルナックは王女救出にあたって、魔女の助言を求めた。
「報酬を忘れるなよという警告のつもりか」
カルナックは笑いながら、歩き出した。
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