|
西の海に浮かぶ、小さな島がカルビとナムルの隠れ家だった。
朝、島はすっぽりと霧に包まれていた。
空挺隊の蒼兵らしき爆音が、あいかわらず響いていた。
「なんでえ、蒼兵をくりだしてくるとは、おおげさだな」
と、ナムルが鼻をヒクつかせて上空を見上げた。
「なんだ? 蒼兵って……」
カルビが聞いた。
「蒼兵は……空を翔ける人型戦闘兵器です」
スターシアが暗い顔で答えた。
「で、どうするんだ? カルビ」
虎のナムルが大あくびをひとつ。そして、スターシアをにらみ、
「この姫を食うか?」
と言った。
「やめろ!」
カルビの語気が荒い。
「なんで? おめえは、シーアスが憎いんだろう。そこの姫なんだぜ、こいつは。食っても罰はあたらねえよ」
「俺……よくわかんないけど……シーアスが憎いって気持ちを、この人に……個人にぶつけちゃいけないんだよ」
「ざけんな! おめえは、いつから、そんないい子になっちまったんだ! いや、いい子じゃねえ! 腰抜けだ! 抜作だ!」
「てめえ!」
カルビがナムルに躍りかかった。
「やるか! 抜作!」
「うるせえ! バケモノ!」
ふたりが、取っ組み合いのケンカをはじめた。
「やめてください!」
スターシアが声をあげた。
そのとき、
「女性の言うことは、素直に聞くものだな」
と、透き通る声がした。
スターシアは、はっ! として振り返る。
「カルナック!」
「なに!?」
ナムルが、カルビを組み伏せながら、声の方向をにらみ、うなる。
ガルルルルルル!
「姫は返してもらうぞ!」
言った瞬間、光よりも早く剣を突くのはカルナック。
バスッ! というにぶい音をたてて、カルナックの剣がナムルの腹に突き刺さる。
「なめるなっ!」
と、ナムルがはらいのけようとして、四肢をふんばったとたん、ガクッ! とくずれるように倒れた。
「ナムル!」
カルビが叫ぶ。
「お、おかしい……体が……しびれる」
ヒュンと剣を腰に納めたカルナックが、
「さあ、姫さま、もう心配はありません」
とやさしく微笑んだ。
「カルナック……いつ……どうやって……ここへ……」
スターシアはおどろきをかくせなかった。
「神のお導きです。姫を助けよという声を聞きました。そして、この場所も……」
カルナックは力強くスターシアの肩を抱いた。
「なろーーーーーーーっ!」
カルビが吠えて、野性の本性をムキ出しにする。
「おれが相手だ!」
カルビがカルナックをにらみつけた。
|