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石を積み上げた運河水道ぞいに東へ走ると、そこには手つかずの森がいきなり出現する。〈あやかしの森〉である。
昼なお暗い、魔女の住む森だ。
ここに近づく人間は、ほとんどいない。
鉄騎馬が前足を蹴り上げて、歩みを止めた。
戦場を駆けるためにつくられた鉄騎馬が、森に入るのをいやがっていた。
「どう!」
と、カルナックが手綱を引いて落ちつかせる。
「ここで待っていなさい」
カルナックは鉄騎馬を降りて、単身、森の中に入っていった。
森がザワザワと揺れた。
異物を発見して、警告を発しているようにも思えた。
「わたしです。カルナックです!」
凛(りん)とした声で、カルナックは、森の奥に向かって名乗った。
また、森がざわめいた。
グエッ! グエッ!
怪鳥が暗い森のなかを飛んだ。
そのとき、
グウオオオオオオオオオオオオン!
と、森全体がゆがむ。
「ふふ。ムダなおどしは、やめてください。わたしは、大魔女アスリータのタトゥーを受けたカルナックです」
そう言って、カルナックは服をまくり、二の腕を天にかかげた。
そこには、赤いヘビが二匹からみあった紋様が刻印されていた。
森のざわめきが消えた。
静寂がもどってきた。
「カルナックか……」
低くしわがれた、この世のものとは思えぬ声が響いた。
「はい」
「なんの用か?」
声はカルナックを押しつぶそうとしているようだった。
「シーアスの姫君スターシアさまの居場所を知りたいのです」
カルナックは肝が座っていた。
顔色一つ変えない。
「スターシアとな」
「行方不明なのです」
「ほう。で、報酬は?」
声の調子が変化したのをカルナックは聞きのがさない。
「わたしが、シーアスの王となったときに、王宮の正式な役職をさしあげましょう」
「それだけかい?」
「はい。魔女の名誉回復は、あなたたちの悲願のはず」
「…………よかろう」
「では、よろしく」
と、カルナックは森全体をぐるりと見渡した。
気配は、どこにもない。
どのくらいの時間がたっただろう。
「西の海を半日、船で行くと小さな島がある。そこに子どもと虎と姫君が見える」
「ありがとう」
カルナックは、それだけ聞くと、来た道を小走りに引き返した。
「約束は、わすれるな!」
カルナックの背に声がぶつかってきた。
「はい。このタトゥーにかけて!」
カルナックは再び二の腕を天にかかげた。
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