|
「追え! 探せ! 見つけろ!」
シーアスの騎士団長・クロニクルがばかでかい声を張り上げていた。
えらい騒ぎになっていた。
「スターシアさまがさらわれたぞ!」
「全員、装備!」
「だれだ! さらったのは!?」
「空飛ぶ虎だ!」
「虎だと!?」
「空挺隊の動員もたのんであるらしい」
「なに!? あの空挺隊が動くのか……」
静かな、暗い部屋だ。
石の壁がしめっている。
地下にある部屋だ。
たいまつの明かりがゆれている。
「くくくく。うはははは。そうか、姫が虎にさらわれたか」
明かりに照らされて、笑ったのは、空挺隊のルース隊長。別名サソリのルース。
「そんなに、おかしいかねルース?」
テーブルをはさんで座っているのは、教会の老僧。すっぽりと、頭からローブをかぶっている。顔の表情は読みとれないが、その機械のような目だけが、クルリ、クルリとまるでピントを合わせるかのように動いていた。
「ああ。おかしいね。あの、バカ王、アブラックのあわてぶりが見てみたいぜ」
「どうかな?」
「ふざけんなよ。いくら、能なし王のアブラックだって、自分の娘がさらわれたら、そりゃ、泣きもするし、取り乱しもするさ! 俺たち、空挺隊が姫を助けりゃ、あのバカ王め、当分、俺たちに頭が上がらん! どーだ、おかしいだろう!」
「教会としましては、なんとしても、姫さまは取りもどしていただきたいのです」
「ほう。教会まで、俺たちに頭を下げるってのか……まあ、いままでよ、騎士団ばかりかわいがりやがって、俺たち空挺隊なんざ見向きもしなかったからな」
「これは、お礼の前金ということで……」
老僧が、テーブルの上にずしりと重い布袋を置いた。
「いくらだ?」
「はい一万シリア」
「すげえな。一年分の給料だぜ」
「どんなことをしても、姫は取り返していただきたい!」
「空挺隊の命の代金ってことか?」
「はい。姫さえもどればお礼はいかほどなりとも……」
「わかった。やろう」
ルースは腹をくくった。
手柄をたてて、なんとか空挺隊の地位を上げなくちゃならなかった。
(いつまでも、前の戦のお荷物と呼ばせはしねえぞ!)
ひそかに、ルースの胸のなかに燃え上がるものがあった。
「じゃあ。俺は行くぜ」
「お願いしましたよ」
ルースが部屋から出ていっても、しばらく老僧は動かなかった。
「スターシアがアブラックの娘だと……笑わせてくれる。スターシアこそ、われら教会の娘なのだ。いつか、教会は、あの娘とともに、この世界を……。くくくくく」
と、老僧は不気味に笑った。
|