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ICON 新二都物語カルビサーガ 第10話

「え?」
 スターシアが顔をあげた。
 海面スレスレに、黒いかたまりが急速に近づいていた。
 ネコットは、緊張した。反射的にスターシアの前に立ち、腰の剣に手をかけた。
 だが、まったくどうしたことだ。
 恐怖が心の中にふくらんでいた。
 ネコットは大きく目を見開き、その場に釘付けとなった。
 足が地面に接着剤でくっつけられたように動かなかった。
 背後で、スターシアの声がした。
 だが、その声さえも、遠いかなたの雑踏の中にかき消えた。
「ネコット!」
 スターシアが声を張り上げ、一発、ネコットのほおを平手で張った。
 パチンと小気味よい音が響いた。
「あっ! ス、スターシアさま……」
 ネコットが我に返る。
「なにを、ぼんやりしているの!」
「は、はい」
「虎よ! 本当に虎が飛んできたわ!」
 と、スターシアは剣を抜きはなった。
 虎が、ふたりに向かってくる。
「背中に、だれか乗っています!」
 剣を抜きながら、ネコットが叫ぶ。
「王国の市民が騒ぎださぬうちに、わたしが退治します!」
 きっぱりとスターシアが言った。
「はい。わたしもお手伝いいたします」
 ネコットも剣の腕はかなりのものだが、スターシアにはかなわなかった。
 スターシアの剣は、王宮騎士団の名騎士とうたわれた、かのグリフォン男爵直伝のものだった。
 グングンと少年を乗せた、空飛ぶ虎が近づいてくる。
 スターシアは剣をかまえ、グッ! と腰を落とした。
 虎が近づく。
 スターシアが口を真一文字に結ぶ。
 さらに、虎が近づいた。
 スターシアの剣を持つ手に力が入る。
「ぐるるるるるるるる!」
 虎がうなりながら、スターシアに襲いかかった。
「右!」
 虎に乗った少年が叫ぶ。
「てああああああああ!」
 裂帛の気合いのもと、スターシアは剣を振り上げた。
 虎は、右にほんの少し回転した。
 たった、それだけのことで、スターシアの剣は空を斬った。


「スターシアさま!」
 ネコットが叫んで、剣を横にはらう。
 ネコットの剣がナムルのうしろ足をかすめた。
「この野郎!」
 と、カルビが、タッ! と後方に跳んで、ネコットの顔面を蹴飛ばし、そのまま虎の背中にもどった。
 早い! なんという早い動きなんだ!
 ネコットは、おもいっきりすっころがった。
「やれ! ナムル!」
 カルビの声で、ナムルはスターシアをにらみつけ、天空に停止した。


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