|
「腹から人石を出したぞ!」
「腹……」
虎のナムルは、あわてて自分の腹を見た。
腹は、なんともなかった。
肉体を傷つけずに肉体のなかの異物を取り出したのだ。
天空仙人の超能力だった。
「俺……チョコレート・パフェが食いたくなってきた」
ナムルがつぶやいた。
「なにか食いたいと思えば、もう大丈夫! さすがに山の神と言われるナムルだな。さあて、わしとの約束をはたしてもらおうか」
「約束だと……」
「ああ。なんでも、くれると言った」
「し、しかたねえ」
ナムルが渋々答えた。
「この人石は、まだ暖かい。いまなら、助かるようじゃ。そこで、おまえの命を一つもらいたい」
「おいおい……な、なんてことを」
「いいではないか。おまえは山の神ではないか。たしか三つの命をもっている。一つ、この少年のために使わせてくれ」
「くそ……」
ナムルが腕組みをして考えこんだ。
「山の神のナムルが、約束を破ると言うのか?」
「ええい! しかたねえ! これも、なんかの運命だ! やるよ! 命を一つな!」
ナムルが言った瞬間、
「ほいな!」
と、天空仙人が片手をナムルの胸に当てた。
フッと、白いものが天空仙人の手に握られた。
その白いものを、天空仙人は、人石のカルビにぶつけた。
石が、
ブウウーーーーーーーン!
と振動した。
すると石が放射線状にまばゆい光を放った。
「目がつぶれる」
と、ナムルが叫んだ。
「ほほほほほ。生き返るぞ!」
仙人が喜んだ。
「うああああああああああ!」
人石が突然叫んだ。
そして、カルビは元の人間にもどった。
「少年よ! 名は?」
仙人が聞いた。
「……おれは、カルビ」
石から人間にもどったカルビは、ナムルの腹のなかでもちゃんと成長していた。
「おれは……どうなったんだ……」
カルビはナムルと天空仙人を交互に見つめた。
「ほほほほ。これはゆかいじゃ」
「ふん。まったくひでえめにあった……」
とナムルが舌打ちした。
「おまえは山の神ナムルのおかげで、七年の眠りからいま目覚めたのじゃ」
と天空仙人が言った。
「さあて、俺はもう行くぜ」
と、ナムルが立ち上がった。
「まてよ。おれも連れていけ」
カルビが言った。
「ざけんな! 小僧!」
「連れていけ!」
とカルビが声を上げた。バリバリッと雷光のような光がほとばしった。
「はい」
カルビの不思議なエネルギーに圧倒されたように、思わず、ナムルは答えてしまった。
そして天空仙人のところをあとにしたカルビとナムルは、静かに山の中で暮らした。
そして三年の月日が流れた。
|