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世紀のダジャレ好きロリコン王・アブラック三世は、金の礼服に着替えていた。
首から胸にかけて、赤や青の宝石がちりばめられている。
王は大きな鏡に自分の姿を映し、ほほえんだ。
「やはり、わしが一番カッコイイだろう!」
と、大きな鏡に問いかけた。
「はい。王さまが一番カッコイイでございます」
なんと、大きな鏡の上部に彫刻された、黒天使の顔が、いきなりパッチリと目を開けて答えた。
「うむ」
王は満足して、うなずいた。
そこへ、「父上さま!」と声をかけて入ってきたのは、アブラック三世のひとり娘スターシアだった。
黒いロングドレスをつけたスターシアは、ハッと息をのむほどに美しかった。
「おお、スターシアか。わたしがカッコイイ父親であったために、なんとおまえは美しいのだろう。その事を神に感謝しなくてはいけないよ。そして、この父にも感謝を忘れないことだ」
アブラック三世は平然と言った。
「はい。感謝いたします」
と、スターシアはドレスをつまんで膝を曲げながら軽いおじぎをした。
「で、おまえがここに来るなんて、なんの用だね?」
「はい。虎が天から舞い降りたと民衆が騒いでおります」
「虎が天から……はははは。それは、なにかの見間違いだ。民衆のなかにトラホームでもはやっているんじゃないかね。くくくくく」
自分で言ったダジャレに、自分で笑うセンスがスターシアには信じられなかった。
だが、それでも、目の前の青年のように見える中年男は、この国シーアスの王であり、スターシアの父なのだった。
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スターシアは父を愛してはいなかった。だからと言って憎んでもいない。ナルシストでロリコンでダジャレ好きなこの男を、自分とはすごく遠い存在として感じていた。そういう親子関係だった。いや、親子関係などと呼べるものはどこにも存在していない。
幼いころから、スターシアのそばに父親の匂いなどかけらもなかった。
ずっと、この男は、この館に住み、スターシアや母親とは別の生活をしていた。
「民衆の不安は鎮めなくてはなりません」
スターシアは、一四歳にしては整いすぎた大人の顔立ちだった。その大きな黒目がちの目に見つめられると、どんな大人も立ちすくんでしまう。
「ううん。そうじゃな」
アブラック三世は、スターシアに見つめられ言葉をのみこんだ。
「では、わたくしが行ってまいります。教会の方への配慮は父上からよしなに」
「わかった……」
その言葉を聞く前に、くるりとスターシアは背中を向け、足早に部屋を出て行ってしまった。
「まったく、わが娘ながら……あいつは男ならよかったんじゃ。きっと……」
と、アブラック三世はつぶやいた。
そのとき、
「くくくくく……」
と、くぐもった笑い声が聞こえた。
「何者じゃ!」
アブラック三世がとがめる。
「くくくくく……」
奥にある象嵌づくりの黒檀の机の下の闇に、ボロ雑巾のような老人が座っていた。
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