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ICON 新二都物語カルビサーガ 第3話

 天空の雲間から、グイグイと猛スピードで急降下する虎には、なんと巨大な悪魔のような翼がついていた。
 ガオオオオオオオオオオ!
 虎が牙をむいて、さらに吠えた。
「うわあああああああああ!」
 と、桟橋を取り囲んでいた見物人が、あわてて逃げ出した。
「どわああ! た、助けてくれえ! 虎じゃ! 虎が天から降ってきたぞ! こりゃ、なんか悪いことの知らせじゃ!」
 老水夫が腰を抜かして、ガタガタふるえていた。
「ったく!」
 と、ゲンドウが太い腕でヒョイっと老水夫をかつぎあげて、桟橋から遠ざかった。
 威勢のいい水夫たちだが、意外と迷信のたぐいにはいくじがない。
 ましてや、虎が天から降ってきたとなれば、これは、天が落ちてくるぞというほどの一大事だった。
 冷静だと思っていたゲンドウも、心臓はドキドキと早鐘を打っていた。
 ゲンドウが、好奇心からヒョイと振り返る。
 天から急降下した虎は、そのまま、ザブンと海の中に沈んだ。
 と、つぎの瞬間、虎は口に、あの檻に入れられた少年をくわえて海面に飛び出すと、追ってくるピガルを、鋭い爪で一閃した。
 海獣がドッと赤い血をふきだしのたうつ。
 虎は、急上昇すると、かなたの空へと少年をくわえ飛び去った。
「あの少年は……何者だ」
 と、空のかなたを見つめ、ゲンドウがポツリとつぶやいた。

 白亜の城があった。
 あたりは一面に、黒いバラが咲いていた。
 その城は、海の国として君臨するシーアスの王、アブラック三世の居城である。
 城壁を二重、三重にはりめぐらした城の奥に、王の館が建っていた。
 中庭の囲みを越えて、潮風が開け放たれた館のなかに入ってくる。
 薄い絹織物のカーテンがゆれる。
「いけませんわ王さま……そ、そんな……」
 と、奥の居間から、幼い女の忍び声がこぼれていた。
「いいんじゃ! さあ、こっちにおいで。逃げるでない」
 王は四五歳になる。
 だが、二〇代といえる若々しさを保っていた。
 黒々とした髪を後ろで束ね、太い眉と薄い唇が、意志の強さと非情さを物語っていた。
 とまどう少女の薄い朱色のメイド服の裾をつかみ、アブラック三世は好色な笑みを口元に浮かべた。
「おゆるしください! 王さま!」
 少女はふるえていた。
「そーいう顔がかわイイダコ!」
 アブラック三世は、ダジャレを言いながら、少女を追っかけまわした。
「そのスカートの中に、頭を突っ込ませてクレヨン!」
 アブラック三世は、その見た目とは反対に、単なる中年のダジャレ好きなロリコン好色王だった。
「ああああああああ!」
 ソファーに倒れた少女が悲鳴をあげた。
 ついに、ロリコン王は、スカートの中に頭を突っ込んだ。
 少女の顔が、屈辱と恐怖にゆがんでいた。
 硬くつぶった目の端から、ツツツと涙がこぼれる。
 小さな胸のふくらみの上に重ねた両手が、強く握りしめられていた。
「なーんだ! ピンクのパンツだ! わしゃ、純白が好きなのに!」
 不満そうに、アブラック王が顔を上げて、さげすむように少女を見た。
 シクシクと少女は泣いている。
「いつまで泣いておるんじゃ! ささっと、帰れ! それから、少女は純白のパンツでなくちゃいカンヅメ!」
 と言って、居間を出ていった。


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