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ICON デビルBOX 第65回 第2章 〜涅槃(ねはん)〜 その3
タイトルコール「連続ラジオドラマ、デビルBOX 第2章 〜涅槃(ねはん)〜 その3」
語り「想いは疾走する。
 時には、思わぬ早さで、それは駆け抜ける。
 そして、同時多発的に、ひとつの想いが伝播する。
 そのことを時代という。
 ぼくたちはいま時代を駆け抜けている。
 強い想いを持って、ぼくと同じ想いの人間と接続するために……
 (レイ・グリーンの日記より)」
  
 BGM:テーマ曲
  
霧子(独白) 「あたし、霧子。フォッグの"霧"に、子どもの"子"。19歳、独身。刑事にもらった本を開いたら、この場所に来てしまったらしい。"らしい"っていうのは、来た覚えがないから。まばたきの間に、自分のアパートから、このクサナってとこに来た……そして午前零時ってヤツが現れて、"もうひとつの世界は、あなたがこころに描いた"と言った……知らないよ、そんなこと」
  
 SE:ボー、ボー(汽笛の音、次第に大きくなって)
  
霧子(独白) 「赤い部屋の壁にかけられている絵から、船の汽笛が聞こえる。その音がだんだん大きくなって、船が絵から飛び出してきた。船は豪華客船だ! "う、うわあああ、ふみつぶされる!"と、目をつぶった瞬間!」
  
 BGM:ちょっと気取ったようなシンフォニー
  
シルエット 「こんばんわ。お嬢さん」
霧子 「うわっ、外人だ……えーと、シルブプレ、ってなんでフランス語?」
シルエット 「ボンソワール、マドモアゼル霧子さん。わたくし、シルエット伯爵でございます」
霧子 「ん? なんか、このヒト、輪郭の中が黒っぽい。っていうか、黒いかたまりじゃん……あ、あの……ここは?」
シルエット 「ウィ。ここは、フランスの誇る豪華客船ルイ13世号です。ようこそ、霧子さん。さぁ、行きましょう」
霧子 「えーと、どこへ?」
シルエット 「はあ? 行き先は霧子さん、あなたがご存じのはずでしょ?」
霧子 「"はずでしょ"って言われましてもねぇ。こんな船に突然乗せられて、行き先なんてわかるわけないじゃないですか? ……第1、あたし船乗ったことないですしね。ムッシュ・シルエット」
シルエット 「まぁまぁ、ご冗談のお好きな方。さあ、行き先は?」
霧子 「だから、知らないっていってるだろ!」
シルエット 「知らないはずはありません。行き先を知らなくちゃ、あの赤い部屋、クサナにいるはずない。午前零時が許さないわ」
霧子 「"許さない"っていってもね……"思い出すことです"って、零時は消えたんだもん。これって、なんか、放置プレイ? あーもう、いったいここ、どこなの? で、なんで部屋のなかに、こんな豪華客船が入れるの? どう考えたっておかしくない?」
シルエット 「わかった! あなた、常識の枠に縛られているのね。まあ、かわいそう」
霧子 「その言い方、不愉快」
シルエット 「宇宙は広大だと思うでしょ。
 でも、実はコップのなかに宇宙は入ってしまう。
 刹那の時のなかで、極大は極小。
 永遠も一瞬の時。
 あなたの想い出が人類3000年の想い出を駆けめぐるように。
 さあ、想い出の旅に出よう。
 ぐるりと回る向こう側。
 津軽海峡冬景色。
 千夜二夜の夜伽は蟻の戸渡り。
 想い出は重いで〜。
 背中に背負った唐獅子牡丹。
 くされて千切れて飛んでいってしまった。
 この世の義理は、ギリギリ。
 その赤い血のなかに眠っているだろう遺伝子に、戸籍の黄色くにじんだそんな名前の意味を解放し、思い出すの霧子さん。
 想い出の都に虹かけて。恋のいろはに坂ころがって、うぶな産毛にほほ赤らめた、あの時、この時、嵐が丘を!」
  
 BGM:フェードアウト
  
霧子(独白) 「時がゆきます。
 風が見えます。
 お城が見えます。
 昼下がりの踏切を越えようとしたそのとき、わたしの想い出が粉々に砕け散った。
 シェラザードの歌に乗って、千とひとつの想い出を、もう1度ひろい集めれば、千とふたつにつながるのでしょうか?
 それは完全な円となって、想い出の都への道を……示すのでしょうか……」
  
 BGM:再びメインテーマ
  

●配役/タイトルコール、霧子:横山智佐/シルエット:山口勝平
/語り:広井王子


●ドラマ終了後のトーク
 ドラマ終了後、山口さんは詩が「難しい」とコメント。横山さんも同感のようだ。

 さらに、山口さんは、霧子が部屋から出ていないことに気づいた。広井さんによれば、部屋の中に豪華客船が入っているという状況であるらしい。

 横山さんは、「もーうダメだ。もーう無理になってきた」と発言。常識の枠にとらわれてしまっていると、自分を嘆いた。ついで、横山さんのデビュー作でもある『ロボットカーニバル』というアニメアンソロジー作品の中に、このような観念的なものもあったと発言。

 広井さんは、文章や声のみの表現は、アニメやゲームなどの画のついたものより、自由で想像がふくらむと語った。山口さんも肯いた。

 横山さんは、『未来世紀ブラジル』という映画を連想したようだ。

●出演はがき
◆ゆきじさん(山形県)
「シルエット」
 その姿は影絵のような悪魔。貴族。霧子の想い出のなかに潜む


 広井さんは、シルエットの語源についてウンチクを語った。横山さんと山口さんは、へーと感心していた。ついで、広井さんは、サンドウィッチの語源を語り、似たようなものとコメントした。

◆砂塵マサさん(千葉県)
 刑事のくれた本は千夜一夜物語。白紙の千夜一夜は、霧子の想い出が映し出されてゆく。そこにはデビルBOXの歴史が刻まれてゆく。過去と未来はメビウスの輪のようにつながっている。


 この採用はがきを聞き、横山さんは、『デビルBOX』ということを忘れかけていたと話し、改めて「いろんな世界、可能性があるのがデビルBOXです」とコメントした。広井さんも、「いろんな方法をとってみようかなぁと思って」と今回の趣向を話した。


2006年7月8日放送マル天ダイジェストはこちら



  シェラザード
 アラビアンナイトこと『千夜一夜物語』の登場人物のひとり。
 そもそも『千夜一夜物語』は、若い女性と一夜を過ごしては殺していた女性不信の国王の行為をやめさせるため、大臣の娘シェラザードが自ら王のもとに嫁ぎ、千夜に渡って毎夜王に話をしては気を紛らわさせ、ついには国王の悪行をやめさせたという物語が主軸となっている。話佳境に入ったところで「次回はまた明日」とシェラザードが打ち切る為、王は続きが聞きたくて別の女性に伽をさせるのを思い留まり、それが千夜続いたという。
 この夜伽話の中では、船乗りシンバッドの話や、アラジンの魔法のランプ、アリババと40人の盗賊の話は有名。

『ロボット・カーニバル』
  OVA興隆期の1980年代中盤制作されたロボットをテーマにしたオムニバス作品。担当した作家は、それぞれの作家性を前面に押し出して製作した。横山さんが出演した作品は『明治からくり文明奇譚〜紅毛人襲来之巻〜』でやよい役で出演している。

『未来世紀ブラジル
 テリー・ギリアム監督が手がけたSFブラック・コメディ。1985年、イギリス/アメリカ。実験、幻想的な映像が多く、SFカルト映画の金字塔とも言われている。

シルエット
 シルエットは、18世紀のフランスの蔵相『エティエンヌ・ド・シルエット(Etienne de Silhouette)』の名前に由来する。
 シルエットは、倹約政策のひとつとして、肖像画は高価な絵具を使わず黒一色で塗りつぶしたものにせよと主張し、輪郭を主とした肖像画が流行したことから、彼の名にちなみ「シルエット」と呼ばれるようになった。
 広井さんが言うように、ひとの名前を語源とした一般名詞に"サンドイッチ"もある。広井さんの説明のように、この語源は、大英帝国のサンドウィッチ村の伯爵ジョン・モンタギュー 4世 (John Montagu, 4th Earl of Sandwich) にちなむもの。彼はトランプ遊び好きで、食事にかける時間も惜しむ程だった。そこで、ゲームの合間に片手で食事が取れるよう、パンに具を挟んだものを用意させていた事から、いつしかこれがサンドイッチと呼ばれるようになったとのこと。
 
 


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