| タイトルコール | 「連続ラジオドラマ、デビルBOX 第2章 〜涅槃(ねはん)〜 その3」 |
| 語り | 「想いは疾走する。
時には、思わぬ早さで、それは駆け抜ける。
そして、同時多発的に、ひとつの想いが伝播する。
そのことを時代という。
ぼくたちはいま時代を駆け抜けている。
強い想いを持って、ぼくと同じ想いの人間と接続するために……
(レイ・グリーンの日記より)」 |
| | |
| | BGM:テーマ曲 |
| | |
| 霧子(独白) | 「あたし、霧子。フォッグの"霧"に、子どもの"子"。19歳、独身。刑事にもらった本を開いたら、この場所に来てしまったらしい。"らしい"っていうのは、来た覚えがないから。まばたきの間に、自分のアパートから、このクサナってとこに来た……そして午前零時ってヤツが現れて、"もうひとつの世界は、あなたがこころに描いた"と言った……知らないよ、そんなこと」 |
| | |
| | SE:ボー、ボー(汽笛の音、次第に大きくなって) |
| | |
| 霧子(独白) | 「赤い部屋の壁にかけられている絵から、船の汽笛が聞こえる。その音がだんだん大きくなって、船が絵から飛び出してきた。船は豪華客船だ! "う、うわあああ、ふみつぶされる!"と、目をつぶった瞬間!」 |
| | |
| | BGM:ちょっと気取ったようなシンフォニー |
| | |
| シルエット | 「こんばんわ。お嬢さん」 |
| 霧子 | 「うわっ、外人だ……えーと、シルブプレ、ってなんでフランス語?」 |
| シルエット | 「ボンソワール、マドモアゼル霧子さん。わたくし、シルエット伯爵でございます」 |
| 霧子 | 「ん? なんか、このヒト、輪郭の中が黒っぽい。っていうか、黒いかたまりじゃん……あ、あの……ここは?」 |
| シルエット | 「ウィ。ここは、フランスの誇る豪華客船ルイ13世号です。ようこそ、霧子さん。さぁ、行きましょう」 |
| 霧子 | 「えーと、どこへ?」 |
| シルエット | 「はあ? 行き先は霧子さん、あなたがご存じのはずでしょ?」 |
| 霧子 | 「"はずでしょ"って言われましてもねぇ。こんな船に突然乗せられて、行き先なんてわかるわけないじゃないですか? ……第1、あたし船乗ったことないですしね。ムッシュ・シルエット」 |
| シルエット | 「まぁまぁ、ご冗談のお好きな方。さあ、行き先は?」 |
| 霧子 | 「だから、知らないっていってるだろ!」 |
| シルエット | 「知らないはずはありません。行き先を知らなくちゃ、あの赤い部屋、クサナにいるはずない。午前零時が許さないわ」 |
| 霧子 | 「"許さない"っていってもね……"思い出すことです"って、零時は消えたんだもん。これって、なんか、放置プレイ? あーもう、いったいここ、どこなの? で、なんで部屋のなかに、こんな豪華客船が入れるの? どう考えたっておかしくない?」 |
| シルエット | 「わかった! あなた、常識の枠に縛られているのね。まあ、かわいそう」 |
| 霧子 | 「その言い方、不愉快」 |
| シルエット | 「宇宙は広大だと思うでしょ。
でも、実はコップのなかに宇宙は入ってしまう。
刹那の時のなかで、極大は極小。
永遠も一瞬の時。
あなたの想い出が人類3000年の想い出を駆けめぐるように。
さあ、想い出の旅に出よう。
ぐるりと回る向こう側。
津軽海峡冬景色。
千夜二夜の夜伽は蟻の戸渡り。
想い出は重いで〜。
背中に背負った唐獅子牡丹。
くされて千切れて飛んでいってしまった。
この世の義理は、ギリギリ。
その赤い血のなかに眠っているだろう遺伝子に、戸籍の黄色くにじんだそんな名前の意味を解放し、思い出すの霧子さん。
想い出の都に虹かけて。恋のいろはに坂ころがって、うぶな産毛にほほ赤らめた、あの時、この時、嵐が丘を!」 |
| | |
| | BGM:フェードアウト |
| | |
| 霧子(独白) | 「時がゆきます。
風が見えます。
お城が見えます。
昼下がりの踏切を越えようとしたそのとき、わたしの想い出が粉々に砕け散った。
シェラザードの歌に乗って、千とひとつの想い出を、もう1度ひろい集めれば、千とふたつにつながるのでしょうか?
それは完全な円となって、想い出の都への道を……示すのでしょうか……」 |
| | |
| | BGM:再びメインテーマ |
| | |