| タイトルコール | 「連続ラジオドラマ、デビルBOX 第2章 〜楽園〜 その2」 |
| 語り | 「想いは疾走する。 時には、思わぬ早さで、それは駆け抜ける。 そして、同時多発的に、ひとつの想いが伝播する。 そのことを時代という。 ぼくたちはいま時代を駆け抜けている。 強い想いを持って、ぼくと同じ想いの人間と接続するために…… (レイ・グリーンの日記より) 」 |
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| | SE:雨音 |
| | SE:雷鳴 |
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| 鮎子(独白) | 「いきなりの雨だった。 いつのまにか、日本もモンスーンが渡る国になった。 温暖化の影響だろうか。きっと四季の移り変わりなんて情緒は、なくなってゆくのだろう。"勝ち組"、"負け組"に象徴されるように、近いうち、乾期と雨期に分かれるかも……」 |
| ミチル | 「低気圧がくると、身体が重いな」 |
| 鮎子 | 「そうゆうものなんですか?」 |
| ミチル | 「人間も自然の一部だからね」 |
| 鮎子 | 「人間は自然の一部ってよく聞くけど、実感してるヒトって少ないと思います。自然のサイクルで言えば、人間に天敵はいないわけだから、増えすぎれば人間は自然にとっての脅威になるんじゃないかな……」 |
| ミチル | 「ふっ、そうだな。 だから、増えすぎたときの自殺プログラムが遺伝子に組み込まれてる。 それが、戦争だ。それでも、増えれば、今度は疫病で減らす。 "自然災害"っていうけど、自然にとって人間が増えることが災害なわけだからね。最後は火山噴火や気温変化で攻撃してくる」 |
| 鮎子 | 「そうか。だから昔から、人間は自然に感謝し、祈っていたんだ」 |
| ミチル | 「ん……、もう祈りの通じる時代じゃない。 自然はもう許してくれない。 自然と人間との生き残りをかけた戦いに突入してる」 |
| 鮎子 | 「で、でも、それって、人間の負けでしょ?」 |
| ミチル | 「わからない。やってみないと……氷河期を生き残ったし、ノアの箱船の例もある。 いまは石油エネルギーの時代だが、数百年後は地球内部のエネルギー抽出に成功しているかもしれない。 宇宙開発と同時に、地球そのものを人間がコントロールする時代が……」 |
| 鮎子 | 「そんなことして……人間は幸せなんだろうか?」 |
| ミチル | 「……幸せかぁ」 |
| 鮎子 | 「幸せってさ、ちょっとしたことでしょ? 好きな人といっしょにいられる時間とか。おいしいものを食べてたり……」 |
| ミチル | 「ふっ、そうだな。 毎日フォアグラだキャビアだって事じゃないしな……。 だが、その理由を地球上全ての人間がかなえ様とした時は、必ずエネルギー問題と食料問題にぶち当たるんだ。 ちょっとした幸せをかなえる為に、人間はこの自然を傷みつけているって事さ。 そして、"ちょっとした幸せ"は、いつしか際限のない欲望を加速させるんだ」 |
| 鮎子 | 「際限のない欲望?」 |
| ミチル | 「ああ。そこらのスーパーマーケットのぞけばわかる。 魚も肉もふんだんにあるじゃないか、それも安価で。 毎日そんなに魚が捕れると思うかい? 毎日どれだけの家畜を殺せば、あんなに大量の肉が出荷できるんだ?」 |
| 鮎子 | 「あ……、考えた事なかった……」 |
| ミチル | 「50年くらい前は、どこの食卓もまずしかった。 そのまずさから解放されようと、野菜も魚も肉も、工業製品にしたんだ。 それこそ、この国を世界に類をみない、モノに溢れた国にした根源的理由だ」 |
| 鮎子 | 「工業製品?」 |
| ミチル | 「そう。自然にあるものを取って食べてるわけじゃない。 今や、ほとんどの食材が、人間の手でコントロールされ、作り出されたものだ。 この国は、世界でいち早く、自然と袂をわかったんだ……」 |
| 鮎子 | 「ミチルって、そうゆう仕事をしているの?」 |
| ミチル | 「……悪魔の正体は、自然なんだ。 その正体がわかったんで、国は自然と闘うための組織を作った。 いいかい、戦後、日本の川が汚れた。 でも、それは水質浄化によって、いま蘇っている。それと同じことだ。 社会が自然という悪魔のちからで汚れはじめたら、それを浄化しなくちゃならない」 |
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| | SE:雨音 |
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| 鮎子(独白) | 「不思議な時間が流れていた。 毎日ふつうに生きていて、ミチルの言っているみたいなこと、考えたこともなかった。 そこらに売ってるコンビニ弁当を、なんの疑問も感じないで食べていた。 でも、たしかにヘンだ。 同じ味のものが大量に作られ、インスタントにおいしいものが食べられ、残ったものが大量のゴミになって廃棄されている。 それでほんとに、みんな幸せになったんだろうか? 50年まえの貧しかったといわれている時代よりも…… もし50年前と幸せの分量が変わらないのなら、なんのためにこんなにものが溢れ、ゴミにまみれる国を作ったのだろう? ほんとうは、未来は暗澹(あんたん)たるものかもしれない。 自然はもっと狡猾(こうかつ)で、人間のやりたいようにようにやらせて自滅を待っているのかもしれない……」 |