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ICON デビルBOX 第54回 第2章 〜接続〜 その5
タイトルコール「連続ラジオドラマ、デビルBOX 第2章 〜接続〜 その5」
語り「想いは疾走する。
 時には、思わぬ早さで、それは駆け抜ける。
 そして、同時多発的に、ひとつの想いが伝播する。
 そのことを時代という。
 ぼくたちはいま時代を駆け抜けている。
 強い想いを持って、ぼくと同じ想いの人間と、接続するために……
 (レイ・グリーンの日記より)」
  
鮎子(独白)「わたしの名前は鮎子。魚へンに占うと書く"あゆ"。
 父は、ことのほか鮎釣りが好きだった。
 鮎を釣る仕掛けを、幼いわたしに説明する父の記憶がある。
 父と暮らした記憶はないのに、そのことだけ……はっきり覚えている。

 「これは掛釣(かけづり)の一種で、友釣(ともづり)というんだ」

 と言った、父の声も覚えている。
 なぜ父は、そんな釣りのことを、幼いわたしに話して聞かせたのだろう……」
  
ミチル「なに、それ?」
  
鮎子(独白)「父の病室で拾った銀のチェーンを、ミチルがのぞき込んだ」
  
ミチル「ふっ、きれいだなぁ〜。ペンダントヘッドがサイコロみたいで、かわいい」
鮎子 「さっき、父の病室で拾ったんです……」
ミチル「川谷さん、そんなオシャレしてたのかな? ふっ、まさか病室にオンナがいたとか?」
  
鮎子(独白)「ミチルは、きれいな顔をしている。きれいな顔の男って信用出来ない。それに、どこか無神経だ。きっと愛されることに慣れているからだろう……。この場合だって、"病室にオンナがいたのかな"って、あっけらかんと言ってのける。仮にもわたしは娘だ。あんまりデリカシーがなさすぎる」
  
ミチル「ああ、ごめん、ごめん。そうだった。お父さんだったよね。川谷さん……あぁ、そうそう! オンナがいたって言ったのは、へンな意味じゃなくて、川谷さんのコネクションの人間ってこと……」
鮎子 「(前のセリフを遮るように)いいです! 気を遣っていただかなくて。父親だけど男です。いろんなことあると思います。私だって、子供じゃないからそのくらいのことわかります」
ミチル「……ごめん」
鮎子 「ただ……ちょっと寂しかっただけです。父にオンナがいるとしたら、たぶん、その人を愛していたと思うんです。じゃ、私はなんだったのかなって……」
ミチル「(前のセリフを遮るように)そんなふうに考えちゃいけない。それはまったく別な愛情だ。きみももっと大人になればわかる」
鮎子 「ずるいですよ、そんな言い方って」
ミチル「そうかもしれない。でも、そう言うしかない」
  
鮎子(独白)「わたしは、やるせない気持ちでペンダントを握った」
  
ミチル「さっ、もう遅い。帰ろっ」
鮎子 「だって、父を捜さなくちゃ!」
ミチル「今は、ムリだ」
鮎子 「なんで? いったい、父はどんな仕事をしてたんです? 命狙われたり、病院から失踪したり。映画じゃあるまいし……」
ミチル「ふっ……おれたちは、この国の秘密捜査官だ。川谷さんの仕事は……囮(おとり)捜査だ。彼は、いつも囮となって相手の懐(ふところ)に入り込む。それが仕事だ。だから、家族とも会えなかったんだ……」
  
鮎子(独白)「ふと、父が囮の鮎に思えた……そのとき、握ったペンダントが熱くなったように感じた」
  
 BGM
  

●配役/タイトルコール、鮎子:横山智佐/ミチル:山口勝平/
語り:広井王子


●ドラマ終了後のトーク
 横山さんは、「へぇ〜、バレちゃった。囮捜査してたってね」とドラマの意外な展開に驚いた様子。広井さんは、囮捜査をバラした理由を「ショートショートの常道みたいなやつ」だと説明した。

横山「"常道みたい"って何ですか?」
広井「ほら、頭にさぁ、鮎の話をつっといてさぁ。そいで、そこに友釣りの話をしておいて、最後に(話を)こうくっつけるという」

 今回の台本がかなり深く考えて書かれていると知った横山さんは、広井さんに「僕やったもんねぇ〜、って感じなんですか、いま?」と話を振った。

 広井さんは「僕やったもんねぇ〜。久しぶりにちゃんと仕事したもんねぇ〜」と照れながら話した後、今回のドラマを「助けてくれた出演はがき」を紹介した。

●出演はがき
◆吉田かおりさん(埼玉県)
 鮎子の父は囮捜査官で、悪魔側にスパイとして送り込まれていた。鮎子の出生の秘密もしだいに明らかになっていく。ちょっと前にやってた『輪舞曲(ロンド)』みたいなサスペンスはどうですか?

 広井さんは、囮捜査の設定がおもしろいと思い、ドラマの設定に使ったそうだ。さらに、台本を書いていくうちに「なんか頭に(別の話を)くっつけほうがいいな」と考え、その時フッと思い出した"鮎のかけ釣り"を追加したそうだ。

 横山さんは、広井さんの説明を聞いているうちに、韓国映画の『シュリ』を思い出したと話した。

広井「意外とこう、釣りとかなんかから蘊蓄(うんちく)たれて、そのスパイ物に使っていくとかって、あるんだよね。たまにね」
横山「はい〜、よく出来ました!(拍手しながら)」
広井「よく出来ました。よく出来ました。これも(投稿)はがきのおかげでございます」

 春になって投稿はがきがドカンと増えたそうで、広井さんは「うれしいことです」と話し、横山さんは「ありがとうございます」と感謝の言葉を述べた。

●投稿はがき
◆αΩ(アルファオメガ)さん(埼玉県)
 「ハイブリッドチルドレン〜天魔の合成獣〜」
 天使と悪魔の心臓・竜の爪・鬼の角・大蛇の眼など、あらゆる物を人間の子供に移殖した事により誕生したキメラ(合成獣)。

 広井さんは「すごいよ!」と驚き、山口さんは「うわっ、な〜んか百鬼丸の逆みたいですね」と感想を述べた。

 横山さんは"ハイブリッド"という単語に反応し、「ニュータイプとかじゃないんだ」とコメントした。

◆Lさん(千葉県)
 「天国について」
 基本的に天界、悪魔界、人間界とはつながりが無い独立した世界。入るときに"ヘヴン役所"で神の意思によって審査が行われ、パスした者のみが中に入れる。

 横山さんは"ヘヴン役所"について、"ヘヴン"が英語で"役所"が日本語なところが「ベタベタだ」と笑った。

 山口さんも"ヘヴン役所"が気に入ったようで、独自に考えた使用例を紹介した。

◆クニヒコさん(埼玉県)
 「クロス」
 天使・悪魔・人間に属さない者。魂を管理していて、自らを神と名乗っている。

 投稿を聞いて、山口さんは「ほぉ〜」と感心した。

◆菅田康朗さん(東京都)
 「謎の少女」
 彼女には思い出がなく、自分の名前もわからない。天使か悪魔かもわからない。彼女は、自分の思い出を探すために他人の思い出を集めている。

 広井さんは、他人の思い出を集めるという設定がかなり気に入ったようで、「これいいでしょ?」と興奮気味に話した。そして、集めた他人の思い出を自分の思い出にしてしまうという、新たな設定まで考案した。

 横山さんは、思い出を取られるのが「怖〜い」とおののいた。

 山口さんは、"思い出を集める"という設定から、「なんとかの森にいたババァ」みたいだと感想を述べた。

 広井さんは、最近は斬新な投稿が多く、新しい人の投稿も増えていると紹介。横山さんは「みんなで創っていくラジオドラマですから」と語り、リスナーの投稿を促した。


2006年4月22日放送マル天ダイジェストはこちら



  常道
 だれもがとる普通のやり方、常道手段のこと。セオリーともいう。
 小説やドラマの場合、常道手段のひとつとして、前に引用となる事例を登場人物のセリフや行動にちりばめておいて、物語の筋に絡める手法がある。

『輪舞曲(ロンド)』
 2006年1月15日より放送された、竹野内豊さんとチェ・ジウさんのW主演によるテレビドラマ。韓国で父親を殺された過去を持ち、その事件の真相を暴くためにある巨大組織へ潜入捜査した刑事(竹野内豊)と、行方不明の父親を探すために来日し、妹と共に韓国料理店を経営する韓国人女性(チェ・ジウ)の、運命的な恋と悲しい宿命を描いた作品。

『シュリ』
 1999年に製作された韓国映画。北朝鮮の特殊工作部隊と韓国の情報機関の戦いを描いた大ヒット・スパイ・アクション大作。タイトルの『シュリ』とは、北朝鮮と韓国の国境を流れる川に生息する半透明の魚の名前で、水と同じに見えてその姿が判らないことから、北朝鮮からのスパイを呼ぶ隠語として使われていたそうである。

百鬼丸
 手塚治虫原作の漫画『どろろ』の登場人物。百鬼丸は、野望を持った父親のせいで、身体の48箇所を奪われて生まれてきたが、天才的な医師に身体の足りない部分を補われて成長。どろろと共に、48の魔神に奪われた体を取り戻すため、旅を続けている。両腕の義手に仕込まれた鋭い剣が武器。

なんとかの森にいたババァ
 『デビルBOX 第38回 〜ビビデ&バビデ&ブー〜 その4』で折笠愛さんが演じた、ひきがえるの森に棲む魔女ヘルバットのこと。想い出を抜き取る悪魔という設定だった。
 
 

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