| タイトルコール |
「連続ラジオドラマ、デビルBOX 第2章 〜接続〜 その3」 |
| 語り |
「想いは疾走する。
時には、思わぬ早さでそれは駆け抜ける。
そして、同時多発的に、ひとつの想いが伝播する。
そのことを時代という。
ぼくたちは今、時代を駆け抜けている。
強い想いを持って、ぼくと同じ想いの人間と接続するために……
(レイ・グリーンの日記より) 」 |
| 鮎子(独白) |
「イタメシ屋のごはん。
あたしニンニク嫌い。あのむせかえるような匂いがダメ。
ミチルはおいしそうにペペロンチーノをほうばっている。
イタリアじゃ、"ペペロンチーノは料理場のまかない飯だ"って誰かが言ってた。
それにしても、ミチルはよく食べる。その食べっぷりが、不思議とエロチックだ」 |
| ミチル |
「鮎子は、スパゲッティー嫌い?」 |
| 鮎子 |
「すきです」 |
| ミチル |
「ん……じゃ、食べなよ」 |
| 鮎子 |
「あの……、あたし、ニンニクがダメなんです」 |
| ミチル |
「あ、なんだ。それじゃ、他の頼もう」 |
| 鮎子 |
「あ、い、いいです!」 |
| ミチル |
「ん、よかないさ。
最初に聞けばよかったよな。ごめん。
おなかすいてたからさ、おれの好みで頼んじゃった。
失敗、失敗。
あ、お願いします」 |
| 鮎子(独白) |
「……思ったよりデリカシーはあるみたい。
素直にあやまる姿勢はスキ。
言い訳はなしで」 |
| ミチル |
「きみは、おとうさんの仕事のこと、知ってるの?」 |
| 鮎子 |
「何をやってたかってことですか?」 |
| ミチル |
「そう」 |
| 鮎子 |
「知らない。
いまどき、たいがいの家庭で父親がどんな仕事してるかって……知らないと思う」 |
| ミチル |
「んまあ、……そうだな」 |
| 鮎子 |
「知ってたら、……いけないんですか?」 |
| ミチル |
「ん……そう思う?」 |
| 鮎子 |
「思う」 |
| 鮎子(独白) |
「ミチルがあたしの目をじっと見た。薄い灰色の瞳だった」 |
| ミチル |
「あたり」 |
| 鮎子(独白) |
「微笑みながら、まるで、安物の景品が当たったみたいに言った」 |
| ミチル |
「おれたち、あ、きみのおとうさんもなんだけど、所属してる組織って、結構ヤバイことやってる。
犯罪じゃないけど、命がけって場面もあるんだよ。
きみがその仕事内容知ってるってことになると、ちょっと……面倒なんだな」 |
| 鮎子 |
「とうさんみたいに……撃たれるの?」 |
| ミチル |
「ん、撃たない。
ただ、外部との接触をね、……遮断しなくちゃならないんだ」 |
| 鮎子(独白) |
「なんだか小説の世界みたいな話。それもスパゲッティ食べながら」 |
| 店員 |
「おまたせしました。"小悪魔のピザ"です」 |
| ミチル |
「ん、ありがとう。食べて?」 |
| 鮎子 |
「はい……あの、なんでこれが、小悪魔なんですか?」 |
| ミチル |
「ん? ヒナ鶏を1匹丸ごと炭火で焼いた姿が、悪魔に見えるから」 |
| 鮎子 |
「ふーん……。これ、悪魔に見える?」 |
| ミチル |
「さあ、悪魔は見たことないから」 |
| 鮎子 |
「そ、そうですよね。悪魔見たことないですよね。
でも、イタリア人って、悪魔見たことあるんですね。
だから、これ見て……悪魔だって思ったわけでしょ?」 |
| ミチル |
「ふっ……空想じゃないか?」 |
| 鮎子 |
「ふふっ、空想だと思ってることの半分は、真実なんだって」 |
| ミチル |
「そうなの?」 |
| 鮎子 |
「ほとんどの人間が、父親が銃で撃たれるなんて、空想すらしない……でも、こうしてそれは起こる……」 |
| ミチル |
「ん……、ふっ、さ、熱いうちに食べな。それで、病院に行こう」 |
| 鮎子 |
「……はい」 |