| 世界はカオスに包まれている。そして「語り部」によって、その歴史を刻む。 |
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SE:吹雪 |
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| 語り部 |
「少年の名は冬馬と言いましてな、午年の冬に生まれたから、冬馬なのです。冬馬は、幼い妹をかかえ、痩せた土地を耕して生活おりました。暮らしは決して豊かではありませんでした。その年の冬は、そりゃえろう雪の多い年であった。」 |
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| きく |
「ねえ、お兄ちゃん」 |
| とうま |
「なんだい、きく?」 |
| きく |
「もう米櫃にお米がないんだけど」 |
| とうま |
「そうか……そうだったね」 |
| きく |
「もう、近所の方に借りるだけのお米を借りてしまっているのよ」 |
| とうま |
「ああ、わかっている。でもね、あの土地は痩せているけれど、父さんが大事にしてきた土地なんだよ……いくら庄屋さんが買って下さると言っても……兄ちゃんたんがからんじゃった」 |
| きく |
「でも」 |
| とうま |
(咳払い) |
| きく |
「でも」 |
| とうま |
「どうしたきく?」 |
| きく |
「のど、大丈夫?」 |
| とうま |
「大丈夫だ」 |
| きく |
「でもね、それじゃあ、わたしたち、どうやって暮らしていけばいいの? この雪じゃ、出稼ぎにいくっていったって」 |
| とうま |
「明日雪はやむ、山に入って猟をしてみるさ」 |
| きく |
「ちょっと今も変だったよ」 |
| とうま |
「気にするなきく」 |
| きく |
「お兄ちゃんが猟をするの? 大丈夫」 |
| とうま |
「ああ、子供のころに猟師の次郎おじさんに付いて山に入ったことがあるのさ。心配するな」 |
| きく |
「うん」 |
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SE:雪を踏んで歩く音 |
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| とうま |
「はあ、はあ、はあ、 雪が深いはあ、はあ、うん? あれは、何だ?」 |
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SE:雪中を走る音 |
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| とうま |
「あっ……人間だ、人が倒れている。 大丈夫か? おい、しっかりしろ!」 |
| たつ |
「……あっ、足が」 |
| とうま |
「こりゃヒドイ怪我だ。よしっ、おぶってやる。 山を降りてオイラの家に行こう」 |
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BGM:ほのぼのとした雰囲気 |
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| とうま |
「おまえ、名前は?」 |
| たつ |
「たつ……と言います」 |
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SE:薪のはぜる音 |
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| きく |
「あたたかい湯を…… これしかなくて、ごめんなさい」 |
| たつ |
「(飲んで)ああ、暖まるわ、ありがとう」 |
| きく |
「あたし、“きく”です」 |
| たつ |
「きくちゃん、かわいいわね」 |
| とうま |
「おーい、きく! すげえぞ! ほーら、こんなでっかい猪が」 |
| きく |
「うわっ、すごい、これ、どうしたの?」 |
| とうま |
「いや、不思議なことなんだ、 山に入ったらさ、猪のヤツが俺の前に倒れてきてさ」 |
| たつ |
「それは、ようございましたね」 |
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| 語り部 |
「こうして、冬馬が山に入ると、鳥や獣が、まるで つかまえてくれと言わんばかりに 目の前に倒れて、くるのでありました」 |
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SE;薪のはぜる音 |
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| きく |
「お兄ちゃん……お兄ちゃん! いつまで眠っているの」 |
| とうま |
「ああ、酒飲みすぎた。もう少し寝る」 |
| きく |
「も〜、そうやって、もう何日もお酒ばかり飲んで、もう 少しは働いたら! もう雨も溶けて、そろそろ田んぼを耕さないと」 |
| とうま |
「うるさいなあ 妹のくせに。頭いて」 |
| きく |
「もう、もう!」 |
| とうま |
「あ〜!」 |
| きく |
「もう!」 |
| とうま |
「田んぼなんかもういいんだ。山に行けば沢山獲物が取れる。今じゃ、オイラは、この村一番の金持ちなんだ! |
| きく |
「でも〜(泣き出す)」 |
| たつ |
「冬馬さん……そんな言い方をしては きくさんがかわいそうですよ」 |
| とうま |
「うるさいぞ、あんたも! あんたの足を治してやったのは誰だ!」 |
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SE:雷鳴 |
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| とうま |
「うう」 |
| きく |
「ああ」 |
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| 語り部 |
「その時、にわかに空が曇り、雷鳴が轟いたのです」 |
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| たつ |
「とうま……あなたに助けられた私は、龍神である。恩返しにと思い、山の獣たちをおまえに差し出してやったのだ。そのことでおまえは持ち前の優しさを捨て……獣となった! 故に、私が喰らう!」 |
| きく |
「たつさん……いえ龍神さま、お願いです、お兄ちゃんを助けて」 |
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| 語り部 |
「龍神はきくの涙にふれると、その姿を現し、天に向かって飛び去っていきました」 |
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| とうま |
「あ〜〜〜、よいしょっと」 |
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| 語り部 |
「ある村に、とても貧しい男がおった。年老いた男は小さな田圃にしがみついて、夢みたいなことを言いながら、生きておったそうな。そして、冬になると山に入り粗末な道具で獣を追うが、村で1番下手な猟師であった。男の名はとうまといい……希望をさがしておったそうじゃ」 |